武蔵 (スループ)

日本海軍スループ「武蔵」

「武蔵」は、日本海軍が明治時代に建造したスループです。艦名は旧国名である武蔵国に由来し、同名の艦としては2代目にあたります。当初は巡洋艦として建造されましたが、後に海防艦、そして測量艦へと役割を変え、日本の海軍史にその名を刻みました。

艦の概要

「武蔵」は、3本マストを持つ鉄骨木皮構造のスループとして設計されました。船体と機関は、当時の最新技術を導入し艦政局で計画されました。

主要要目（1902年時点）

排水量: 1,664英トン
垂線間長: 61.264m
最大幅: 10.668m
深さ: 3.853m
吃水: 前部4.685m、後部5.300m
主機: 2気筒ホリゾンタル・コンパウンド・エンジン
ボイラー: 円缶6基
出力: 1,781.88馬力
速力: 全力12.43ノット
燃料: 石炭
乗員: 196名
兵装: 17cmクルップ砲、12cmクルップ砲、1インチ4連諾典砲など

艦歴

建造

1883年3月1日に横須賀海軍造船所にて起工が決定。1884年10月4日に起工され、1886年3月30日に進水しました。進水式には皇后が臨席され、華やかな式典が行われました。1888年2月9日に竣工。

巡洋艦時代

竣工当初は巡洋艦として運用され、1890年8月23日には第一種に定められました。日清戦争では、仁川方面の警備や大連・旅順・威海衛攻略作戦などに参加しました。1896年からは、東北地方や北海道、千島列島の警備に従事しました。

海防艦時代

1898年3月21日、三等海防艦に類別されました。1897年からは海防艦籍のまま測量任務にも従事。1902年5月1日には根室湾口で座礁する事故が発生しましたが、修理を受け復帰。日露戦争では津軽海峡の警備を担当しました。1912年8月28日、等級改定により二等海防艦に類別変更。

1918年の夏には、ロシア内戦の影響でカムチャツカ半島周辺で漁業者の保護活動や、ペトロパブロフスクでの反革命派への物資支援を行いました。

測量艦時代

1922年4月1日、軍艦籍から除かれ特務艦（測量艦）となり、姉妹艦「大和」と共に測量任務に就きました。関東大震災後には海底の地形変化の調査を実施。1925年に発見された武蔵堆や、武蔵水道は、本艦の名にちなんで命名されました。

除籍後

1928年4月1日に除籍され、同年10月3日に司法省へ移管。小田原少年刑務所の繋留宿泊船として利用されましたが、1935年に廃船となりました。

歴代艦長

「武蔵」には、数多くの艦長が着任しました。以下はその一部です。

有馬新一 少佐
松永雄樹 少佐
千住成貞 大佐
日高壮之丞 大佐
横尾道昱 大佐
沢良煥 大佐
伊藤常作 少佐/大佐
鹿野勇之進 大佐
東郷正路 大佐
遠藤増蔵 大佐
友野雄介 中佐
武井久成 大佐
永峰光孚 大佐
矢島功 大佐
松枝新一 大佐
加藤重成 大佐
滝川具和 大佐
井手麟六 中佐
徳久武宣 大佐
伊地知季珍 中佐
佐々木広勝 中佐
横尾純正 中佐
栃内曽次郎 中佐
花房祐四郎 中佐
山田猶之助 中佐
井内金太郎 中佐
水町元 中佐
吉岡良一 中佐
川浪安勝 中佐
関重孝 中佐
松永光敬 中佐
平田得三郎 中佐
松村豊記 中佐
真田権太郎 中佐
海老原啓一 中佐
大見丙子郎 中佐
中桐啓太 中佐
東条政二 中佐
前川義一 中佐
水谷耕喜 中佐
日高寛 中佐
吉田茂明 中佐
隅田益吉 中佐
安藤良治 中佐
吉武純蔵 中佐
梅田文鹿 中佐
鳥野団一 中佐
松山為麿 中佐
毛内効 中佐

姉妹艦

葛城 [I]
* 大和 [I]

まとめ

スループ「武蔵」は、巡洋艦から海防艦、そして測量艦へと役割を変えながら、日本の海軍史に貢献しました。その生涯は、日本の近代化の歩みと深く結びついています。

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