羯

羯（けつ）とは

羯（けつ）は、4世紀の中国北部の山西に存在した小部族です。五胡十六国時代に石勒によって後趙を建てましたが、短命に終わりました。後趙滅亡後、漢人による大虐殺により、羯人は歴史の表舞台からほぼ姿を消しました。

名称の由来

羯という名称の由来には、いくつかの説があります。

匈奴との関連: 『魏書』では、羯は匈奴の別部であり、上党武郷の羯室に住んだことから「羯胡」と呼ばれるようになったとされています。『晋書』では、南匈奴に属した羌渠種の子孫であるとされています。
蔑称説: 内田吟風は、羯という名称は中国人がつけた蔑称であり、「去勢された羊」という意味を含んでいると主張しています。
言語起源説: E. G. Pulleyblankは、羯とはエニセイ語で「石」を意味する言葉の音訳であり、「石」という姓を持つ人々との関連を示唆しています。また、羯室という地名は、彼らが移住した後に付けられた可能性があると指摘しています。

後には、羯は匈奴や異民族を指す代名詞としても用いられました（例：羯鼓）。

歴史

319年、羯族の石勒が前趙から独立して後趙を建国しました。しかし、350年頃に後趙が衰退し、漢人の冉閔が冉魏を建国すると、羯人殲滅令が出されました。これにより、羯族はほぼ中国史から姿を消しましたが、南北朝時代の爾朱栄や侯景が羯族との関連性を示唆する記述も存在します。

起源に関する諸説

羯族の起源については、以下のような様々な説があります。

匈奴説: 『晋書』には、羯族は南匈奴に属した羌渠種の子孫であると記されています。
ソグド説: E. G. Pulleyblankは、羌渠はソグディアナの康居出身であるとし、さらに康居人を東イラン系、またはトハラ人であると主張しました。石氏と「石国」（現在のタシュケント）との関連や、ソグドの血を引く安禄山が「羯胡」と呼ばれていたことも、この説を支持する根拠とされています。
小月氏説: 匈奴に服属していた小月氏に由来するという説もあります。
* ケット説: 「ケット」という発音が「羯」に近いことから、ケット語族との関連を指摘する説も存在します。

言語

『晋書』には、後趙の仏僧である仏図澄が羯語を発したという記述があります。

羯語の解釈については、テュルク語族系とする説（白鳥庫吉、グスターフ・ラムステッド）と、エニセイ語系とする説（E. G. Pulleyblank）があります。


これらの説は、羯族の多様な起源と、その歴史における複雑な立ち位置を示唆しています。

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