段蘭

段蘭（だん らん）

段蘭（生没年不詳）は、鮮卑段部の大人であり、段遼の弟として知られています。『魏書』では段鬱蘭と表記されています。

生涯

331年、東晋朝廷は兄の段遼を驃騎将軍・幽州刺史・大単于に任じ、北平公に封じました。これに伴い、段蘭も撫軍将軍・冀州刺史に任じられ、勃海公に封じられました。

334年2月、段蘭は慕容翰と共に慕容部領の柳城へ侵攻を試みましたが、慕容皝配下の都尉である石琮と城大慕輿泥の迎撃を受け、失敗に終わります。この結果に激怒した段遼は、段蘭と慕容翰に柳城攻略の厳命を下しました。10日後、段蘭は再び慕容翰と共に柳城を包囲し、雲梯や地下道を駆使して20日間にわたり昼夜を問わず攻撃を続けましたが、石琮と慕輿泥の堅守を崩すことができませんでした。それどころか、石琮が率いる兵の反撃により、段蘭軍は1500もの兵を失うことになります。その後、寧遠将軍慕容汗と封奕らの援軍が到着し、牛尾谷で段蘭軍は彼らを打ち破り、多数の兵を討ち取るという勝利を収めます。

この勝利に乗じて深く侵入しようとする段蘭に対し、慕容翰は故国が滅ぼされることを憂慮し、慎重な態度を促しました。「敵の兵力を詳細に量り、万全でなければ動くべきではありません。今、先鋒を撃破しましたが、敵はまだ主力を残しています。慕容皝は策が多く、伏兵をよく用います。もし、敵が我等を誘き寄せた上で退路を断ち、全軍を挙げて反撃すれば我等は全滅してしまいます。我等へ課せられたのはこの勝利のみです。もし、君命を無視して攻撃を続けた挙げ句に敗北してしまえば、功名共に失います。」と諫言しました。

しかし、段蘭は慕容皝を捕虜にすることこそ最大の功績だと主張し、慕容翰の諫言を聞き入れませんでした。慕容翰は自らの手勢だけでも引き上げると固執したため、段蘭もやむを得ず退却することになりました。

336年6月、段蘭は数万の兵を率いて曲水亭まで進軍し、再び柳城攻撃を試みます。宇文部の大人宇文逸豆帰も安晋へ侵攻し、段蘭に呼応しました。しかし、慕容皝が5万の兵を率いて柳城に進軍すると、段蘭も宇文逸豆帰も退却を余儀なくされました。

338年1月、石虎は総勢17万の兵で段部討伐軍を興します。3月には、慕容皝も石虎に呼応して自ら軍を率いて令支以北の諸城を攻撃しました。段遼がこれを攻撃しようとした際、慕容翰は趙軍への備えを優先すべきだと諫めますが、段蘭は過去の経緯から慕容翰の言葉に耳を傾けず、出撃を決意します。結果、慕容皝の伏兵によって大敗を喫し、多数の兵と民、家畜を失うことになりました。

石虎が金台まで進軍すると、段部勢力下の漁陽郡・上谷郡・代郡の諸太守は相次いで降伏し、多くの城が石虎の手に落ちました。段蘭の敗戦を聞いた段遼は、石虎との戦いを避け、妻子親族と豪族を率いて密雲山へ逃亡します。その後、段遼は前燕に帰順するも、339年に謀叛を企てたとして誅殺されました。

343年8月、5年に及ぶ逃亡の末、段蘭は宇文逸豆帰に捕らえられ、後趙へと送られました。石虎は段蘭を赦し、鮮卑五千人を与えて旧領である遼西郡令支県に駐屯させました。これにより、段部は後趙の従属下ではあるものの、復興を遂げることになります。しかし、段蘭は度々後趙に背き、石虎を悩ませたといわれています。

段蘭の死後、子の段龕が後を継ぎました。没年は不明ですが、350年1月には既に段龕が継いでいることから、それ以前に亡くなったと考えられています。

参考資料

『魏書』（列伝第九十一）
『晋書』（列伝第三十三、石季龍載記上、慕容皝載記）
* 『資治通鑑』（卷第九十七）

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