江上集落

江上集落

江上集落は、長崎県五島市奈留島の北部に位置する、隠れキリシタンによって開かれた集落です。この地は、急峻な早房山の南麓に位置し、大串湾に面した奥行き約300メートル、幅約100メートルほどの平地にあります。背後には遠命寺峠がそびえ、海に面した入り江という地形が特徴です。

歴史

1797年、外海から4家族が移住してきたことが、江上集落の始まりです。当時、福江藩は人手不足、大村藩は領内のキリシタンを厄介払いしたいという双方の思惑が一致し、この地に移住が実現しました。入植当初、平地はタブノキに覆われ、海岸もわずかな砂浜しかありませんでした。移住者たちは「ヒラキ」と呼ばれ、ゼロから開墾を始め、石積みの技術を用いて、わずかな土地に家屋や水田を築き、斜面を畑として開拓しました。

移住者たちは漁師でもあり、奈留瀬戸での漁には制限がありましたが、大串湾では漁業権が確立していなかったため、目の前の海で生活の糧を得ることができました。1873年に禁教令が解かれるまで、信仰は隠されていましたが、1881年にフランス人司祭によって、住民全員が洗礼を受け、カトリックに復帰しました。

1906年には最初の教会堂が建てられ、1918年には現在の江上天主堂が完成しました。住民たちは自ら高台の敷地を開墾し、資材運搬などの労務に協力しました。最盛期には40戸、約200人が暮らしていましたが、世界恐慌の影響で貧困から抜け出せず、再移住を余儀なくされた人もいました。

現在の江上集落

現在、江上集落には7世帯13人が暮らしており、クリスチャンはそのうち3世帯9人です。住民は漁業や畑作に従事するほか、島の町部で働く人もいます。集落は九州自然歩道の洋上道の通過地点にもなっています。

江上天主堂は、かつて世界遺産登録の構成資産でしたが、「禁教期を重点にすべき」との指摘を受け、集落全体を主体とする形で再推薦されました。2018年には、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として世界遺産に登録され、禁教期からカトリック復帰までの過程を示す重要な場所として評価されています。また、集落の景観は重要文化的景観にも選定され、その価値が認められています。

江上天主堂と集落の景観

江上天主堂は、集落の高台に位置し、その美しい姿は訪れる人々を魅了します。集落内には、禁教期にキリシタンが生活していた痕跡が残っており、当時の人々の暮らしを垣間見ることができます。石積みの技術や、海岸線に沿って建てられた家々など、独自の景観が保たれています。

アクセス

奈留港ターミナルからバスで約20分の江上停留所で下車します。ただし、バスは本数が少ないため、タクシーやレンタカー、レンタサイクルの利用がおすすめです。また、江上漁港と久賀島の五輪漁港の間には、海上タクシーも運航しています（要予約）。

まとめ

江上集落は、隠れキリシタンの歴史と文化が色濃く残る場所です。美しい自然と、人々の信仰の歴史が織りなす風景は、訪れる人々に深い感動を与えます。世界遺産に登録されたことで、その価値はさらに高まりました。この集落を訪れることで、日本の歴史の一面を深く知ることができるでしょう。

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