津村博

津村博（つむら ひろし）

津村博（1901年3月21日 - 1944年）は、日本の映画俳優です。本名は樋村滋男。晩年は津村膠、または津村嵺と名乗りました。芸名表記には津村宏、津村謬、津村嘐、津村漻といった異形も見られます。

生涯

1901年（明治34年）3月21日、東京府東京市小石川区（現在の東京都文京区小石川）に生まれました。幼少期を日本統治時代の台湾・台北州（現在の中華民国台北市）で過ごし、台北州立台北第一中学校（現在の台北市立建国高級中学）、台北高等商業学校（現在の台湾大学管理学院）を経て1924年（大正13年）3月に卒業。その後、日本本土へ渡り、帝国キネマ演芸の俳優であった根津新に師事。根津が東亜キネマ甲陽撮影所へ移籍すると津村も同行し、1924年12月25日公開の『海の悲劇』で映画デビューを果たしました。

1925年（大正14年）6月、牧野省三が東亜キネマを退社し、マキノ・プロダクションを設立。津村は東亜キネマからマキノへ移籍し、1926年（大正15年）には時代劇映画『臆病武士』で初主演を務め、同社の新進スターとして活動を始めます。1929年（昭和4年）に牧野省三が亡くなり、マキノ正博が後を継いで新体制が発足すると、津村は嵐冠三郎、荒木忍らと共に「俳優部男優」として名を連ねました。

しかし、新体制下のマキノ・プロダクションは財政難に陥り、1931年（昭和6年）に解散。津村は帝国キネマ演芸へ移籍し『嘆きの都』などに出演しますが、同社も新興キネマへと改組され、津村は引き続き新会社に所属します。1932年（昭和7年）には新興キネマを退社して台湾に戻り、台湾プロダクションを設立。自身も出演した『義人呉鳳』を製作しました。

1933年（昭和8年）に帰国後、フリーランサーとして『決戦高田の馬場』などのトーキー映画に出演。同年、新興キネマの女優・水原玲子との恋愛事件が発覚し、1934年（昭和9年）には水原が退社を余儀なくされます。この事件を機に東京へ移り、1935年（昭和10年）には日活多摩川撮影所に入社。1940年（昭和15年）からは芸名を津村膠、または津村嵺と改め、1942年（昭和17年）まで映画出演を続けました。

1942年（昭和17年）1月の大映設立には参加せず、その後の消息は不明でしたが、終戦後に刊行された映画雑誌『大映ファン』にて、実娘である女優・桜英子の証言により、1944年（昭和19年）に42歳または43歳で亡くなっていたことが判明しました。

主な出演作品

津村博は、数多くの映画に出演しました。初期は東亜キネマやマキノ・プロダクションで時代劇を中心に活躍し、『臆病武士』や『浪人街 第二話 楽屋風呂』などに出演。トーキー映画時代には、日活多摩川撮影所で現代劇にも挑戦し、『真実一路』、『蒙古の花嫁』、『転落の詩集』などに出演しました。また、台湾プロダクション製作の『義人呉鳳』は、現存する貴重な作品として知られています。

海の悲劇（1924年）
臆病武士（1926年）
浪人街 第二話 楽屋風呂（1929年）
義人呉鳳（1932年）
決戦高田の馬場（1933年）
真実一路（1937年）
蒙古の花嫁（1938年）
転落の詩集（1940年）

参考文献

『人物評論』、大宅壮一・尾崎秀樹、不二出版、1933年発行
『日本映画人傳』、岸松雄、早川書房、1953年発行
『日本映画俳優全集・男優編』、キネマ旬報社、1979年10月23日
『芸能人物事典 明治大正昭和』、日外アソシエーツ、1998年11月

外部リンク

津村博 - 日本映画情報システム
津村博 - KINENOTE

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