満光寺 (伊那市)

満光寺（まんこうじ）

満光寺は、長野県伊那市高遠町西高遠に位置する浄土宗の寺院です。天正元年（1573年）に、武田信玄の帰依を受けた岌往上人によって開かれました。当初は親縁山無量寿院満光寺と称し、度重なる火災により記録が失われたため、元禄以前の住職についてはほとんどが不明です。

歴史

『赤羽記』によると、天正10年（1582年）の織田信忠による高遠城攻めの際、保科正直の妻である柏心妙貞が、仁科盛信と共に城内で戦死しました。その遺体は満光寺の住僧である牛王和尚によって手厚く火葬されたと記録されています。一時、浄土寺と改称された時期もありましたが、享保17年（1732年）に満光寺の名前に戻りました。

元禄時代以降は、高遠城主であった内藤氏の菩提寺となり、元文4年（1739年）には本堂が再建されました。その規模は十二間四面にも及び、山門の鐘楼と共に科の木を使用し、善光寺を模して建てられたため、「伊那善光寺」や「信州の科寺」とも呼ばれるようになりました。また、京都の知恩院の直末寺として、多くの末寺を抱えるほど寺格の高い寺院でした。江戸時代中期には、その伽藍の大きさや立派さは善光寺に匹敵すると言われ、伊那地方で随一の寺院でした。

境内

本尊

本尊は、快慶（安阿弥）作と伝わる阿弥陀如来立像です。一刀三礼の作風であり、来迎印を結んでいます。この仏像は、鎌倉時代の武将である工藤祐経の子、犬房丸伊東祐時が一時伊那に流罪となった際に、守り本尊として伝えられた霊仏とされています。昭和62年（1987年）には、久野健博士によって鎌倉時代の造像であることが鑑定されました。

鐘楼門

明治32年（1899年）7月、子供が放った花火が原因で本堂や付近の民家、入屋製糸場が焼失しましたが、鐘楼門は奇跡的に焼け残りました。江戸時代には、門の両側に景勝院や清光院といった坊が存在していました。鐘楼を兼ねた山門は、延享元年（1745年）に三河国長篠の住人である菅沼定次によって建てられたと伝えられています。中には、元文4年（1739年）に松本の鋳物師である田中伝右衛門が鋳造した鐘がありましたが、戦時中に供出されてしまったため、一時的に石が吊るされていました。1965年（昭和40年）に鐘が復元され、1995年（平成7年）には解体復元工事が行われました。

極楽の松

庭園には樹齢数百年の古松があり、ひと目見ると極楽往生できると言われています。この松は、高遠城主であった武田信廉が、兄である武田信玄の遺命を守り、城中の黒松の盆栽を自ら移植したものです。

保科左源太の墓

高遠城主であった保科正光には実子がなかったため、甥である左源太を養子にしましたが、後に徳川秀忠の側室が生んだ正之を養子に迎えることになりました。左源太は正光よりも早くに亡くなりました。五輪塔は高遠にあり、銘があるものとしては最も古いものとされています。

内藤氏の墓

江戸幕府は元禄4年（1691年）に内藤清枚を高遠城主として移封し、清枚は3万3,000石の領地を与えられました。満光寺は、東京都新宿区の太宗寺と共に、内藤家8代の菩提寺となりました。

岡村菊叟の墓

岡村菊叟は、高遠藩の老職であり、学者としても活躍しました。高遠藩の重臣として藩政に貢献し、明治17年（1884年）に85歳で亡くなりました。

関連項目

伊那市の名所・旧跡・観光スポット

脚注

参考文献

『探訪 信州の古寺 浄土教・日蓮宗』1996年 郷土出版社

外部リンク

長野県公式観光ウェブサイト さわやか信州旅.net 満光寺
伊那市観光協会 満光寺

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