溝口氏

溝口氏：新発田藩を治めた武家・華族

溝口氏は、戦国時代から明治維新にかけて活躍した日本の氏族です。豊臣秀吉に仕えた溝口秀勝を祖とし、江戸時代には越後国（現在の新潟県）新発田藩の藩主として存続し、維新後には華族の伯爵に叙せられました。

歴史

安土桃山時代

溝口氏の祖である溝口秀勝は、織田信長に仕えた丹羽長秀に重用され、天正9年（1581年）に若狭国高浜城5000石を与えられました。信長の死後、秀吉に仕え、明智光秀や柴田勝家の遺臣を家臣団に加えて勢力を拡大しました。

天正12年（1584年）に堀秀政が長秀の遺領を継ぐと、秀勝は秀政の与力として加賀大聖寺4万4000石を領しました。秀政とともに九州征伐や小田原征伐など各地を転戦し、二代目の溝口宣勝は秀政の娘を妻としました。

慶長3年（1598年）に溝口家は堀秀治とともに越後へ移封され、新発田藩6万石を領しました。

江戸時代

関ヶ原の戦いでは東軍に属し、戦後徳川家康から所領を安堵されました。以降、江戸時代を通じて新発田藩主家として存続しました。2代藩主溝口宣勝の時代に、弟の溝口善勝に1万2000石を分知（沢海藩）したため、5万石（2000石は新田）となりました。3代藩主宣直の時代にも、弟の宣秋に6000石、宣俊に5000石、宣知に4500石を分与（いずれも新田）し、彼らはそれぞれ旗本家となりました。宣秋の家系は交代寄合横田溝口家として、宣俊の家系は旗本池之端溝口家として続きました。また、新発田藩の家老家には溝口内匠、溝口伊織の家系がありますが、これらはもともと加藤姓、土橋姓でしたが、溝口姓を賜ったものです。

1860年には「高直し」により10万石となりました。

明治以降

最後の藩主溝口直正は、戊辰戦争において奥羽越列藩同盟に与しましたが、領民は新政府を支持し、農民隊を組織して官軍を支援しました。そのため、新発田藩や溝口家に処分はありませんでした。直正は版籍奉還で新発田藩知事に転じ、華族に列しました。1884年の華族令施行により、伯爵位を与えられました。

交代寄合横田溝口家の当主直景も朝廷に早期帰順し、本領を安堵されましたが、最終的に華族にはなれませんでした。

新発田溝口家の家禄は7092石であり、金禄公債は13万8151円27銭5厘でした。直正の死後、爵位を継いだ溝口直亮伯爵は陸軍軍人となり少将まで昇進し、貴族院議員を務めました。

新発田市は、溝口家の家紋である溝口菱を市章として使用しています。

溝口氏の系譜

（※詳細な系譜図は省略しますが、宗家当主や実子・養子の関係などが存在します。）

溝口氏は、新発田藩の歴史とともに歩み、地域に大きな影響を与えた氏族です。

参考文献

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』リブロポート、1994年（平成6年）。
石川健次郎「明治前期における華族の銀行投資―第15国立銀行の場合―」『大阪大学経済学』第22号、大阪大学経済学部研究科、1972年、27 - 82頁。
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社〈中公新書1836〉、2006年（平成18年）。ISBN 978-4121018366。
刑部芳則『京都に残った公家たち: 華族の近代』吉川弘文館〈歴史文化ライブラリー385〉、2014年（平成26年）。ISBN 978-4642057851。
霞会館華族家系大成編輯委員会『昭和新修華族家系大成 別巻 華族制度資料集』霞会館、1985年（昭和60年）。ISBN 978-4642035859。
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 下巻』霞会館、1996年（平成8年）。ISBN 978-4642036719。
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年（平成2年）。ISBN 978-4820540342。
新田完三『内閣文庫蔵諸侯年表』東京堂出版、1984年（昭和59年）。
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年（平成27年）。ISBN 978-4642014724。
『新発田藩史料 第二巻 藩臣編』 国書刊行会、1988年

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