無線標定陸上局について
無線標定陸上局とは、
電波法に基づき定義される無線局の一種で、無線標定業務を行うために陸上に設置された、移動しない無線局のことです。この無線局は、船舶や
航空機の航行以外の目的で、位置の決定や位置情報の送受信を行うために使用されます。無線測位局の一種であり、陸上に設置されるものの、
移動業務には携わらないため、一般的な陸上局とは区別されます。
定義
総務省令の
電波法施行規則において、無線標定陸上局は「無線標定業務を行う移動しない無線局」と定義されています。さらに、関連する定義として、以下のものがあります。
無線標定業務: 無線航行業務以外の無線測位業務
無線測位業務: 無線測位のための無線通信業務
無線測位: 電波の伝搬特性を用いて行う位置の決定や位置情報の取得
これらの定義を総合すると、無線標定陸上局は、電波を用いて位置を特定するシステムを、陸上で固定して使用する無線局であると言えます。
概要
具体的には、レーダーやレーダーの原理を応用した速度測定装置、侵入者検知システムなどが無線標定陸上局として挙げられます。これらは、主に以下の目的で使用されます。
速度測定: 道路での速度違反取締りや、スポーツ競技での速度測定
侵入検知: 施設や敷地への不審者の侵入を検知
監視: 河川や沿岸の監視、
気象観測
無線標定陸上局は、移動しないという点で、陸上局とは異なります。また、
電波を利用して位置を測定するという点で、一般的な無線通信局とも異なります。
免許
無線標定陸上局の免許には、種別コード「LR」が付与されます。免許の有効期間は原則として5年ですが、最初の免許については、5年以内の一定の11月30日となります。技術基準に適合した特定の
レーダーは、
簡易な免許手続きが適用され、
予備免許や
落成検査が省略されます。また、登録検査事業者等による点検を受けることで、
落成検査の一部が省略される場合があります。
自衛隊が使用する
レーダーは、
自衛隊法により免許が不要です。
用途
無線標定陸上局は、多岐にわたる分野で利用されています。主な用途としては、以下のものが挙げられます。
警察: 自動速度違反取締装置
海上保安庁: 沿岸監視用
レーダー
国土交通省: 河川管理や海洋観測
気象庁: 気象観測
電力会社: 気象観測
漁業協同組合・曳航業者: 沿岸監視
鉄道事業者: 障害物検知システム
近年では、レーザーを用いた速度測定装置の導入が進み、電波を利用した速度測定装置の局数は減少傾向にあります。
表示
技術基準適合証明を受けた無線設備には、技適マークの表示が義務付けられています。また、技術基準適合証明番号や工事設計認証番号も表示する必要があります。無線標定用レーダーの場合、技術基準適合証明番号の1文字目は「Q」となります。
旧技術基準の機器の使用
電波法改正により、旧技術基準に基づく無線設備の新規免許は平成29年11月30日までとされました。また、使用期限も設けられていましたが、コロナ禍により一時的に延期されています。旧技術基準の機器の詳細は、電波法の関連規定を参照してください。
操作
無線標定陸上局の操作は、原則として第二級陸上特殊無線技士以上の資格を持つ無線従事者が行う必要があります。ただし、一部の簡易な操作については、資格が不要な場合があります。警察庁が所管するものを除く、空中線電力0.1W以下の適合表示無線設備については、無線従事者の資格がなくても操作できます。自衛隊のレーダーも、無線従事者の資格は不要です。
検査
無線標定陸上局は、落成検査や定期検査を受ける必要があります。ただし、簡易な免許手続きの対象となる場合や、登録検査事業者等による点検を受けた場合は、検査の一部が省略されることがあります。定期検査の周期は、使用する周波数によって異なります。自衛隊のレーダーは、検査が免除されます。
沿革
無線標定の概念は、電波法施行規則制定当初は明確に定義されていませんでした。その後、無線測位局として免許され、1961年に無線標定陸上局として定義されました。無線局の免許は、当初は5年毎の11月30日に満了するように定められ、その後、無線設備の技術基準や検査に関する規定が改正されてきました。
無線標定陸上局には、電波法に基づく電波利用料が課せられます。料額は、電波法別表第6第9項の「その他の無線局」が適用されます。
その他
過去には、タクシーの運行管理システムで使用された「サインポスト」が無線標定陸上局として免許されていた時期がありました。しかし、GPSシステムの普及により、これらのシステムは廃止されました。
無線標定陸上局は、私たちの生活の様々な場面で、安全・安心を支える重要な役割を担っています。
脚注
電波法
電波法施行規則
関連項目
無線局
無線測位局
外部リンク
総務省 電波利用ホームページ