船上通信局

船上通信局とは

船上通信局は、無線局の一種であり、船舶に設置された無線設備を用いて無線通信を行う移動局です。主に船舶間や船舶と陸上の限られた範囲内での通信に利用され、船舶の運航や安全確保に重要な役割を果たしています。

定義

電波法施行規則において、船上通信局は「船上通信設備のみを使用して無線通信業務を行う移動する無線局」と定義されています。

ここでいう「船上通信設備」とは、以下のいずれかの通信を行うための無線設備を指します。

1. 船舶内通信: 操船、荷役など船舶の運航に必要な作業のための通信。
2. 救助通信: 船舶と救命艇などとの間で行われる救助または救助訓練のための通信。
3. 操船援助通信: 引き船と引かれる船舶、あるいは押し船と押される船舶間で行われる操船を補助する通信。
4. 接岸・係留通信: 船舶間、または船舶と桟橋や埠頭との間で行われる接岸や係留のための通信。

これらの通信は、単一の通信路を使用し、特定の電波型式、周波数、空中線電力の電波を用いることが定められています。

概要

船上通信局は、特定の区域内における船舶間の通信、または船舶と陸上施設との間の通信に用いられる無線局です。簡易な船舶局としての性質を持つほか、異なる事業者間でも通信可能な携帯局としての側面も持ち合わせています。また、移動局の一種であり、船舶に開設することで船舶局としても扱われます。

ただし、船上通信局として免許されるのは上記定義の(3)又は(4)の通信を行う設備に限られます。(1)又は(2)の通信を行う設備は、他の無線設備と組み合わせて船舶局として免許されます。

船上通信局の免許を取得するのは、主に水先人会や曳航業者であり、水先案内やタグボート業務に利用されます。以前はアナログ音声による通信が主流でしたが、周波数帯の逼迫から、400MHz帯の船上通信設備はデジタル化が進められています。

免許

無線局の免許は原則として日本国籍を持つ者に限られますが、船上通信局は電気通信事業を目的とするものではないため、例外的に外国籍の者や外国の会社・団体でも免許を取得することができます。船上通信局の種別コードは「MB」です。

免許の有効期間は免許の日から5年ですが、最初の免許に限っては、有効期限が4年を超え5年以内の5月31日となる場合があります。

自衛隊の艦船に搭載する無線機は、自衛隊法の規定により免許が不要で、無線局数の統計にも含まれません。

船上通信設備は、原則として技術基準適合証明を受けた適合表示無線設備を使用しますが、それ以外の機器でも免許申請は可能です。ただし、その場合は簡易な免許手続きは適用されず、予備免許の取得と落成検査の合格が必要となります。

特定無線設備の制度化以前は、無線機器型式検定に合格した「検定合格機器」が用いられていました。

用途

船上通信局の用途としては、港湾での利用が大部分を占めており、これは水先人会や曳航業者が利用しているためです。その他、製造販売用としては造船業者が利用しています。

通信の相手方

船上通信局は、原則として免許人内での通信に限定される携帯局とは異なり、業務に必要な範囲内であれば他の事業者の船上通信設備とも通信が可能です。

移動範囲

船上通信局の利用範囲は、免許人が事業を行う区域に限られます。これは、曳航業者や水先人、造船業者などが業務を行う港湾に限られますが、海上だけでなく桟橋や埠頭などの陸上施設でも使用できます。

電波型式、周波数、空中線電力、使用区別

船上通信設備で使用される電波型式、周波数、空中線電力、および使用区別は、関連する告示によって定められています。

表示

適合表示無線設備には、技適マークと技術基準適合証明番号または工事設計認証番号の表示が必須です。船上通信設備を表す記号としては、アナログは他業務と共用、デジタルは「QT」が用いられます。

検定合格機器の場合は、円形の検定マーク、検定番号、機器の型式名の表示が必須であり、アナログ船上通信設備の機器を表す記号は「F」でした。

旧技術基準の機器の使用

無線設備規則の改正により、旧技術基準に基づく無線設備の免許は2017年11月30日までとされました。使用期限は2022年11月30日までとされていましたが、コロナ禍の影響により「当分の間」延期されています。

対象となるのは、2005年11月30日までに製造された機器や型式検定に合格した検定合格機器、または認証された適合表示無線設備です。また、経過措置として2007年11月30日までに製造または認証された機器も対象となります。

検定合格機器は、設置されている限り検定合格の効力が有効とされ、使用期限が設定されても引き続き使用が可能です。

運用

船上通信局の運用は、無線局運用規則の「海上移動業務、海上移動衛星業務及び海上無線航行業務の無線局の運用」に関する規定に従います。

操作

船上通信局の操作には、原則として第三級海上特殊無線技士以上の資格を持つ無線従事者による管理が必要です。ただし、無線従事者が管理していれば、無資格者でも無線機の操作が可能です。

自衛隊の艦船に搭載する無線機は、自衛隊法の規定により無線従事者の資格は不要です。

検査

落成検査は、簡易な免許手続きの対象となる場合は行われません。それ以外の場合は、登録検査等事業者による点検結果に基づき、一部が省略される場合があります。定期検査は、電波法施行規則により行われません。変更検査は、落成検査と同様に行われます。

自衛隊の艦船に搭載する無線機は、自衛隊法の規定により検査が除外されます。

沿革

船上通信局は、1975年に電波法施行規則に定義され、以降、免許制度や技術基準の変更、デジタル化など、様々な変遷を経て現在に至っています。

電波利用料

船上通信局には、電波法別表第6第1項の「移動する無線局」に関する電波利用料が適用されます。

まとめ

船上通信局は、船舶の安全な運航と効率的な業務遂行に不可欠な無線局であり、港湾における重要な通信手段として、様々な形で利用されています。

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