無線電話用特定小電力無線局

無線電話用特定小電力無線局は、特定小電力無線局の一種で、400MHz帯の電波を利用し、近距離での音声通信を目的とした無線機です。一般には特定小電力トランシーバー、特小トランシーバーなどの名称で親しまれています。

定義

総務省令の電波法施行規則第6条第4項第2号(8)において、無線電話（ラジオマイク、補聴援助用ラジオマイク、音声アシスト用無線電話を除く）用として、以下の周波数帯の電波を使用するものが定義されています。

410MHzを超え430MHz以下の周波数
440MHzを超え470MHz以下の周波数

また、同条同項同号(7)では「聴覚障害者の補聴を援助するための情報を音声その他の音響の伝送を行うラジオマイク」を「補聴援助用ラジオマイク」と、同条同項同号(9)では「視覚障害者の歩行を援助するための情報を音声によつて伝達する無線電話」を「音声アシスト用無線電話」と定義しています。

概要

特定小電力無線局の共通の特徴については、特定小電力無線局#概要を参照してください。電波型式、周波数、空中線電力、通信方式は総務省告示によって規定されています。

技術基準の概要

1. チャネル間隔は原則として6.25kHzですが、413.7-414.14375MHz帯または454.05-454.19375MHz帯の周波数帯では、例外的にチャネル間隔が6.25kHzまたは12.5kHzのものが存在します。

種類

使用する周波数帯の組み合わせにより、以下の2種類に大別されます。

1. 421MHz帯、440MHz帯、422MHz帯を使用するもの
2. 413MHz帯、454MHz帯を使用するもの

電波産業会（ARIB）が、無線設備規則第49条の14第1号及び関連告示の技術基準を含めた標準規格を策定しています。

421MHz帯、440MHz帯、422MHz帯を使用するもの

標準規格「RCR STD-20 特定小電力無線局無線電話用無線設備」4.1版（2005年11月30日）に基づいています。

特徴

技術基準のうち、周波数、空中線電力、通信時間制限などに大きな変更はありません。電波型式は当初FM（アナログ）のみでしたが、後にデジタル方式が追加され、アナログとデジタルの両方に対応した機種も存在します。

通信内容に制限はありませんが、空中線電力が最大10mWと小さいため、通信範囲は近距離に限られます。また、多くの利用者が同一周波数を使用するため、希望するタイミングで通信できない場合もあります。デジタル方式の導入によって秘匿性は向上しましたが、他の業務無線と比較すると低いレベルです。これらの特徴から、主にレジャーや重要度の低い業務での利用に適しています。

通信方式

単信方式：交互に送信を行う方式
複信方式：携帯電話のように、二者間で同時に通話できる方式
半複信方式：中継器を介して交互送信を行う方式
単向通信方式：一方的に音声やデータを送信する方式
同報通信方式：狭いエリア内で放送のように情報を伝える方式

利用例

ウォーキートーキー
インターカム
ワイヤレスインターホン
車載無線機と離れた場所との中継システム
自動車セキュリティ機器の車内音モニタシステム
機器の異常を知らせる音声自動通報システム
工場や展示会などの案内ガイドシステム

規格には中継器の利用も考慮されており、中継器には様々なタイプがあります。

無線機自体が中継機能を備えているもの
高周波部と制御部が分離でき、高周波部を屋外に設置して通信範囲を広げるもの
業務無線やMCA無線との接続装置として利用するもの
中継器同士をLANやインターネットで接続し、法人や団体内の通信網として利用できるもの（IP電話や登録型デジタル簡易無線に接続できるものも含む）

技術的条件

周波数
単信方式、単向通信方式、同報通信方式：422.0500～422.3000MHz（12.5kHz間隔21波、422.1875MHzは周波数制御用）
複信方式、半複信方式、同報通信方式：421.5750～421.9125MHzと440.0250～440.3625MHz（12.5kHz間隔56波、18.45MHz間隔の二周波数28組として使用、421.8000MHzと440.2500MHzは周波数制御用）
電波型式：F1D、F1E、F2D、F2E、F3E、F7W、G1D、G1E、G2D、G2E、G7E、G7W、D1D、D1E、D2D、D2E、D3E、D7E、D7W（すべての電波型式が製造・販売されているわけではありません）
空中線電力：10mW以下
空中線：無線機本体に装着されている必要があり、取り外しや給電線の使用は不可。絶対利得は2.14dB以下。
その他：混信防止機能として、識別信号の送受信、周波数切替、電波の発射停止が容易にできること。また、通信時間は自動的に3分以内（周波数制御用チャネルは30秒、送信時間は0.5秒）に制限され、その際は2秒経過しなければ次の通信を行えない。キャリアセンス機能が必須（空中線電力1mW以下で421.575～421.8MHzまたは440.025～440.25MHzを使用する場合は不要）。

注意事項

周波数：無線機の搭載チャネル数は様々です。
単信方式：11チャネル機、9チャネル機、20チャネル機、18チャネル機
複信または半複信方式：18チャネル機、9チャネル機、27チャネル機
単信と複信を組み合わせた機種もあります。
電波型式：アナログ（FM）とデジタル（GMSK、4値FSK）があり、異なる方式間では通信できません。
スケルチ機能（トーンスケルチ、デジタルコードスケルチ）はメーカーごとに表示が異なる場合があります。
秘話機能などメーカー独自の機能は他社機種では動作しないことがあります。

413MHz帯及び454MHz帯を使用するもの

標準規格「RCR STD-31 空中線電力1mW以下の陸上移動業務の無線局（作業連絡用）の無線設備」4.1版（2005年11月30日）に基づいています。

特徴

主に工場や建設現場などの事業所内で使用されていた作業連絡用の陸上移動局が、特定小電力無線局に移行したものです。親局と多数の子局との間で双方向同時通話を行うのが一般的で、親局は454MHz帯、子局は413MHz帯を使用することが多いです。

技術的条件

周波数：同報通信方式、複信方式または半複信方式用
413.7000～414.14375 MHz（6.25kHz間隔72波、インターリーブ）
454.0500～454.19375 MHz（6.25kHz間隔24波、インターリーブ）
電波型式：F2D、F3E
空中線電力：1mW以下
空中線：給電線の使用が可能。アンテナの絶対利得は2.14dB以下。
その他：通信時間の制限はなく、キャリアセンス機能も不要。その他の条件は、421MHz帯、440MHz帯、422MHz帯を使用するものと同様です。

注意事項

子局の周波数は72波中の任意の24波とされているため、メーカーや機種によっては通信できない場合があります。
チャネル番号はRCR STD-20に規定されていますが、実際にはメーカーや機種ごとに異なり、使用前の確認が必要です。
秘話機能などメーカー独自の機能は他社機種では動作しません。

旧技術基準による機器の使用期限

無線設備規則の改正により、旧技術基準に基づいて認証された機器には使用期限が設定されました。この期限は後に延期されています。詳細については特定小電力無線局#旧技術基準による機器の使用期限を参照してください。

沿革

1989年：特定小電力無線局の一種として制度化。呼出名称記憶装置の搭載が義務付け。
1992年：RCRが「STD-31」を制定。
1998年：呼出名称記憶装置の搭載が廃止され、混信防止機能の搭載が義務付け。
2000年：電波型式にデジタル方式が追加。
2001年：作業連絡用の空中線電力1mW以下の陸上移動業務の無線局が免許不要となり、無線電話用として利用可能に。
2006年：770MHz以下の免許不要局の出荷台数が公表開始。
2012年：電波利用状況調査の周波数境界が770MHzから714MHzに変更。
2016年：チャネル間隔が12.5kHzから6.25kHzに狭帯域化し、チャネル数が増加。一部チャネルの空中線電力は0.1Wに緩和。
2023年：714MHz以下の免許不要局の出荷台数が公表。

諸外国の類似規格

日本以外の400MHz帯を使用する免許不要の無線電話用システムには、以下のようなものがあります。周波数が異なるため、これらの機器は日本では使用できません。

米国

Family Radio Service (FRS)
周波数：462MHz帯7チャネル及び467MHz帯8チャネル
変調方式：周波数変調 (FM)
最大出力：2W

CEPT加盟国

PMR446 (Private Mobile Radio 446 MHz)
アナログ
周波数：446MHz帯8チャネル
変調方式：FM
最大出力：0.5W
デジタル
周波数：446MHz帯16チャネル
変調方式：時分割多元接続 (TDMA)
最大出力：0.01W
運用国：イギリス、ドイツなど
LPD433 (Low Power Device 433MHz)
周波数：433/434MHz帯69チャネル
周波数間隔：25kHz
変調方式：FM
最大出力：0.01W

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