熊野神社 (倉敷市林)

熊野神社（倉敷市郷内）

熊野神社は、岡山県倉敷市郷内地区に位置し、「日本第一熊野十二社権現宮」と称される由緒ある神社です。祭神として伊邪那美神、伊邪奈岐神、家都御子神、速玉之男神を祀り、社殿は熊野本宮大社を模した独特の配置で、左から第三殿、第一殿、第二殿、第四殿、第五殿、第六殿と並んでいます。

歴史

その起源は、修験道の祖である役小角が文武天皇3年（699年）に朝廷から訴追を受け、熊野本宮に身を隠したことに遡ります。社伝によれば、役小角の5人の弟子たちが熊野本宮大社の御神体を奉じ、3年にわたる放浪の末、役小角が赦免された大宝元年（701年）に神託を得て、現在の地に紀州熊野本宮を遷座したとされています。

天平12年（740年）には、聖武天皇が児島一円を熊野神社の社領として寄進し、天平宝字5年（761年）には紀州熊野と同様の社殿（十二社権現宮）が整えられました。さらに、付近の木見に新宮を、山村に那智宮（現・由加神社本宮、蓮台寺）を建立し、新熊野三山を形成しました。

熊野神社は、修験道の寺院と一体化した神仏習合の宗教施設として栄えましたが、平安時代中期以降は衰退しました。承久3年（1221年）の承久の乱後、後鳥羽上皇の第4皇子である頼仁親王が児島に配流され、衰退していた熊野神社と寺院を再興し、南北朝時代にかけて再び繁栄しました。

室町時代の応仁の乱では、戦乱に巻き込まれ、応仁3年（1469年）に細川勝元方に加担した覚王院円海率いる兵によって新熊野は焼き討ちにあい、ほぼ全焼しました。しかし、明応元年（1492年）より再建が開始され、現在、国の重要文化財に指定されている第二殿はこの時に造営されたものです。現在見られる第二殿を除く社殿は、正保4年（1647年）に池田光政によって造営されました。

明治時代の神仏分離令により、十二社権現は熊野神社となり、他の寺院（五流尊瀧院）は天台宗寺院となりました。平成15年（2003年）9月には、明和5年（1768年）建造の拝殿（修験道では「長床」と呼ばれる）が失火により全焼しましたが、平成19年（2007年）10月に再建されました。

文化財

重要文化財
第二殿：明応元年（1492年）建造。春日造。大正10年（1921年）4月30日指定。
岡山県指定重要文化財
第一殿・第三殿・第四殿・第五殿・第六殿：正保4年（1647年）建造。昭和43年（1968年）4月19日指定。
岡山県指定記念物（史跡）
新熊野山：昭和48年（1973年）5月15日指定。

アクセス

JR瀬戸大橋線 植松駅より南西へ徒歩20分、木見駅より北へ徒歩25分
下電バス 熊野神社入口（林）バス停より南東へ徒歩7分
瀬戸中央自動車道 水島IC下車 東へ約5分

参考文献

岡山県高等学校教育研究会社会科部会歴史分科会/編 『新版 岡山県の歴史散歩』 山川出版社 1991年 102-103ページ
現地説明板

外部リンク

日本第一熊野神社

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