玉里島津家

玉里島津家：島津氏の分家と貴重な歴史遺産

島津久光によって明治時代に創設された玉里島津家は、島津氏の分家の中でも特筆すべき存在です。単に玉里家と呼ばれることもありますが、その歴史と遺産は、島津氏研究において欠かせない重要な要素となっています。

明治維新と玉里家の成立

島津久光は当初、島津氏の分家である重富島津家を相続していました。しかし、長男・茂久（後の忠義）が島津斉彬の後継者となった際、久光は茂久の後見人となるため重富家を四男の忠鑑に譲り、本家に復帰しました。明治維新後の功績により10万石の賞典禄を受けた久光は、明治4年（1871年）に再分家し、玉里島津家を興しました。

この玉里島津家の成立は、明治政府による新たな制度下における旧藩主家の動向を示す重要な事例です。特に、明治17年（1884年）に久光が公爵位を授与されたことは注目に値します。旧藩主家の分家が公爵家となった例は非常に少なく、徳川慶喜家と並んで稀有なケースと言えるでしょう。

久光には多くの息子がいましたが、当初は六男の忠経が玉里家の後継者として予定されていました。しかし、忠経が叙爵前に早世したため、七男の忠済が玉里家を継承することとなりました。また、五男の忠欽は今和泉島津家の婿養子となり、後に自身も分家を興しています。

家名の由来と玉里邸

玉里島津家という家名は、久光が再分家後に居住した鹿児島郡下伊敷村字紙屋谷（現在の鹿児島市玉里町）の玉里邸に由来しています。この玉里邸は、天保6年（1835年）に島津斉興によって建てられた島津家の別邸でした。現在、その跡地には鹿児島市立鹿児島女子高等学校が建っています。

玉里島津家文書：貴重な歴史資料

久光は学術的な素養を持つ人物であり、政界引退後は島津家に伝わる膨大な文書の収集・整理に尽力しました。その結果として集められた文書群は「玉里島津家文書」と呼ばれ、鹿児島大学と鹿児島県歴史資料センター黎明館に寄託されています。

これらの文書は、島津家文書と並んで、島津氏や武家社会に関する研究において、極めて重要な一次史料として活用されています。玉里島津家文書は、島津家や近世日本の政治・文化・社会を理解するための貴重な手がかりを提供しています。

重富家との確執と継承

玉里家を創設した際に、久光は重富家（旧重富島津家）の秘宝をすべて持ち出したと伝えられています。そのため、重富家を継承した忠鑑との間には、確執があったと推測されています。この出来事は、島津家内部における権力闘争や家督相続をめぐる複雑な人間関係を垣間見せるものです。

歴代当主

玉里島津家の歴代当主は以下の通りです。

島津久光
島津忠済
島津忠承
島津忠廣（現当主）

まとめ

玉里島津家は、明治維新後の島津家の歴史、そして日本の近代史を理解する上で、重要な役割を果たした分家です。久光個人の資質や、家臣団との関係、そして残された貴重な史料群は、今後の研究においても重要な役割を担うでしょう。玉里島津家の歴史を紐解くことで、島津氏のみならず、日本の近代史への理解が深まることは間違いありません。

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