王子製紙苫小牧工場

王子製紙苫小牧工場は、北海道苫小牧市に位置する、王子製紙株式会社の中核工場です。1910年（明治43年）の操業開始以来、パルプから紙までの一貫生産体制を確立し、日本の製紙業界を牽引してきました。

特徴

- 一貫生産体制: パルプ製造から製紙までを一貫して行うことで、効率的な生産と高品質な製品の提供を実現しています。
- 新聞用紙生産: 王子製紙グループの中で唯一、新聞用紙の生産を続けており、国内需要の約25%を供給する重要な拠点です。
- 世界最大級の規模: 単一工場としては世界最大規模の新聞用紙生産能力を有し、その生産量は圧倒的です。
- 産業遺産: 工場内の複数の施設が「苫小牧市の製紙関連遺産」として経済産業省の「近代化産業遺産」に、また、工場の塀に広がる植物が「未来にのこしたい日本の花風景『池坊花逍遥100選』」に選定されています。

生産設備

工場内には、以下のような生産設備が導入されています。

- KP製造設備 (630 t/D)
- TMP製造設備 (760 t/D)
- RGP製造設備 (190 t/D)
- DIP製造設備 (1,950 t/D)
- GP製造設備 (400 t/D)
- PGW製造設備 (190 t/D)
- 抄紙機 (8台、3,623 t/日)
- 水力タービン (13台、40,350 kW)
- ボイラー (7台、1,490 t/H)
- 蒸気タービン (13台、267,550 kW)

これらの設備により、大量の紙製品を効率的に生産しています。

歴史

王子製紙の歴史は、1873年（明治6年）に設立された「抄紙会社」に遡ります。その後、「製紙会社」、「王子製紙」と商号を変更し、1910年（明治43年）に苫小牧工場が操業を開始しました。

建設の背景

日露戦争後の新聞需要の急増と、経営が悪化していた会社の生き残りを賭けた戦略として、苫小牧工場の建設が決定されました。苫小牧が選ばれた理由は、以下の通りです。

- 豊富な水資源: 支笏湖を背景に、水力発電に必要な豊富な水量が確保できること。
- 原材料の入手: 原材料の調達に不自由しないこと。
- 広大な用地: 広大な土地を安価で購入できること。

工事と操業

1908年（明治41年）から工事が始まり、千歳川水系と尻別川水系に水力発電所が建設されました。また、工場建設資材や原木を運ぶために、軽便鉄道（王子軽便鉄道、苫小牧軽便鉄道）が運用されました。1910年（明治43年）の操業開始は、会社の生産量を飛躍的に向上させ、国内シェアを大きく伸ばしました。また、工場の操業は苫小牧の発展に大きく貢献しました。

近年の動き

1949年（昭和24年）に、過度経済力集中排除法により王子製紙が分割された際、苫小牧工場は一時的に「苫小牧製紙」として独立しました。その後、商号変更を経て再び王子製紙の工場となりました。近年では、労働争議や環境問題など、さまざまな出来事を経験しながらも、常に技術革新と効率化を追求し、現在に至っています。

年表

- 1908年（明治41年）：王子軽便鉄道運転開始（1951年廃止）。
- 1909年（明治42年）：「迎賓館」（王子倶楽部）開館。
- 1910年（明治43年）：「王子製紙苫小牧工場」操業開始。
- 1949年（昭和24年）：王子製紙が「過度経済力集中排除法」により分割し、苫小牧工場単独で「苫小牧製紙」組織。
- 1952年（昭和27年）：商号変更に伴い、「王子製紙工業苫小牧工場」となる。
- 1958年（昭和33年）：145日間に及ぶ労働争議（王子争議）発生。
- 1960年（昭和35年）：「王子神社」建立。商号変更に伴い、「王子製紙苫小牧工場」となる。
- 1967年（昭和42年）：「王子総合病院」が医療法人として独立。
- 1974年（昭和49年）：200 m集合煙突通煙開始。
- 1975年（昭和50年）：新聞古紙脱墨設備新設。
- 1993年（平成05年）：神崎製紙との合併に伴い、「新王子製紙苫小牧工場」となる。
- 1996年（平成08年）：本州製紙との合併に伴い、「王子製紙苫小牧工場」となる。
- 2004年（平成16年）：王子球場を苫小牧市に貸与（「苫小牧市営清水野球場」）。
- 2007年（平成19年）：「大気汚染防止法」による窒素酸化物の基準値超過と報告義務違反が発覚。
- 2010年（平成22年）：創業100周年。社有地に公園（「北光町未来の森公園」）を整備し、苫小牧市に無償貸与。
- 2012年（平成24年）：持株会社制移行に伴い、王子製紙が王子ホールディングスの子会社になる。

福利厚生

工場建設時から、社員確保のために様々な福利厚生施設が整備されました。迎賓館や病院、寮、配給所、共同浴場などが設けられ、社員の生活をサポートしました。一方、職工に対しては、運動会や演劇などのソフト面での福利厚生が中心でした。その後、娯楽施設や体育施設も整備され、地域住民にも利用されるようになりました。

クラブ活動

- 王子イーグルス（現・レッドイーグルス北海道）
- 王子製紙苫小牧硬式野球部（廃止）

アクセス

- 北海道旅客鉄道（JR北海道）苫小牧駅から徒歩約10分
- 道南バス「苫小牧駅前」「駅通」バス停下車
- 北海道中央バス（札幌北営業所）・あつまバス「苫小牧駅前」バス停下車
- 道央自動車道苫小牧中央ICから車で約10分

グループ会社

- 苫小牧共同酸素
- 苫小牧エネルギー公社
- 王子工営北海道
- 王子総合病院
- ホテルニュー王子（グランドホテルニュー王子）
- 王子サービスセンター（2003年4月、マックスバリュ北海道へ譲渡。）

その他

- 王子サーモン: スモークサーモン事業を分割し、株式の大半を売却。
- 生活協同組合道央市民生協: 王子製紙の組合員により誕生し、現在はコープさっぽろに統合。

王子製紙苫小牧工場は、その長い歴史の中で、日本の製紙産業を支え、地域社会の発展に大きく貢献してきました。これからも、その役割と責任を果たし続けることが期待されています。

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