田代町 (鹿児島県)

田代町（たしろちょう）

田代町は、鹿児島県（離島を除く地域）の南東部、大隅半島南部の内陸に位置していた町です。肝属郡に属し、景勝地「花瀬」があることで知られていました。2005年 3月22日、大[[根占町]]との合併により錦江町の一部となり、その歴史を閉じました。この記事では、旧田代町の地域と、現在の錦江町田代地域について解説します。

地理

田代町は、大隅半島南部の内陸部に位置し、東西約12km、南北約11kmの広がりを持つ、総面積77.81平方キロメートルの町でした。周囲を山に囲まれた盆地状の地形が特徴で、標高500～900mの肝属山地に囲まれています。中央部を支脈が走り、北側の麓盆地と南側の大原盆地を形成していました。主な山としては、北東部に荒西山（833.7m）、南部に稲尾岳（959m）があり、稲尾岳周辺には照葉樹林帯が広がっています。この照葉樹林帯は国の天然記念物に指定されています。

主な河川として、雄川（花瀬川とも呼ばれる）と麓川が流れています。雄川は大原盆地から、麓川は麓盆地からそれぞれ西に流れ、町境付近で合流して根占町（現在の南大隅町根占地域）へと注ぎます。集落の多くは両河川沿いに点在し、台地上にある集落はわずかです。集落圏は麓、川原、大原の3つに大別され、小学校区では田代（麓・川原）と大原に分けられます。大原地区は、桜島の大正大噴火（1914年）や終戦による引き揚げ（1946年）に伴い、移住してきた人々によって開拓されました。

交通網としては、東西方向に国道448号、南北方向に主要地方道の鹿屋吾平佐多線（県道68号）が走り、各集落を町道で結んでいます。

気候

田代町は温暖多雨な地域に属していますが、盆地という地形のため、寒暖差が大きいのが特徴です。平均気温は、周辺の海岸沿いの地域と比較して2℃ほど低く、年平均気温は16.4℃（1994年から2003年までの平均）、年降水量は約2500mmです。

隣接自治体

田代町は、北から時計回りに、大[[根占町]]（現在は錦江町）、内之浦町（現在は肝付町）、佐多町・根占町（現在は南大隅町）と隣接していました。

人口

1955年の国勢調査では7,603人を記録しましたが、その後は過疎化と少子高齢化が進み、2000年の国勢調査時には3,410人（1955年の45％）まで減少しました。

歴史

先史時代

田代町域には、縄文時代から弥生時代、古墳時代にかけての遺跡が複数存在しており、この時代から集落が形成されていたと考えられています。

禰寝院

平安時代から室町時代にかけて、田代町域は大[[根占町]]、根占町、佐多町と合わせて禰寝院と称されていました。このうち、田代、根占、佐多は特に禰寝院南俣と呼ばれていました。

1069年の文書には「藤原頼光が三男頼貞に田代、志天利（根占）、佐多の三村を与えた」とあり、この時点で「田代」という地名が存在していたことがわかります。1197年の『大隅国図田帳』には、禰寝院南俣が大隅正八幡宮（鹿児島神宮）の領地であったと記されています。この時期には、菱刈氏と禰寝氏の間で地頭職を巡る争いがありました。

鎌倉時代中期頃より、田代氏が田代町域を領有していましたが、1476年に禰寝氏に併合され、禰寝院は禰寝氏の支配下に入りました。1573年に禰寝氏は島津氏の配下となり、1595年に薩摩国日置郡吉利（現在の日置市日吉町吉利）に移封され、禰寝院は島津氏の直轄領となりました。

田代郷（島津氏による支配）

1595年に、田代町域は島津氏の直轄領となり、薩摩藩の外城として田代郷が置かれました。田代郷は大隅郡に属し、麓村と川原村の2つの村がありました。田代郷の行政を執り行う地頭仮屋（地頭館）は、現在の大根田公民館の場所に置かれ、これが田代町のルーツとなりました。

田代村（明治時代から町制施行前）

1871年の廃藩置県により旧薩摩藩は鹿児島県となりましたが、同年の統廃合で田代町域は都城県の一部となりました。1873年には都城県が廃止され、再び鹿児島県に編入されました。田代郷は垂水（現在の垂水市街地）郡役所の管轄下に置かれ、その後、郡役所の鹿屋（現在の鹿屋市街地）への移転に伴い、南[[大隅郡]]の所属となりました。

1889年4月1日に町村制が実施され、田代郷内の麓村と川原村が合併して南[[大隅郡]]田代村が発足しました。1888年時点の人口は1,947人、戸数は415戸でした。村役場は、藩政時代の地頭仮屋跡地に置かれていましたが、その後何度か移転し、1931年に完成した庁舎は1949年に火災で焼失し、1950年に再建されました。

1950年4月1日には、根占町の猪鹿倉集落を大字川原に編入しました。1950年代の昭和の大合併では、適正規模とされる人口12,000人を下回っていたため、鹿児島県が大[[根占町]]、根占町との合併案を示しましたが、田代村側が反対したため見送られました。

田代町（町制施行後）

1961年4月1日に町制を施行し、大隅半島では最後の町制施行となり、大隅半島から村がなくなりました。1955年の人口は7,603人でしたが、1960年代から過疎化と少子高齢化が顕著になり、1971年には過疎地域に指定されました。1991年には新庁舎が完成しましたが、2000年には人口が3,410人まで減少しました。

閉町（大[[根占町]]との合併）

平成の大合併の流れの中で、2003年に南隅地域の4町（田代町、大[[根占町]]、根占町、佐多町）で合併協議が行われましたが、大[[根占町]]の住民の反対により破談となりました。その後、大[[根占町]]との2町合併案がまとまり、2004年8月10日に大[[根占町]]・田代町合併協議会が設置され、10月29日に合併調印式が行われました。2005年 3月22日に新町「錦江町」が発足し、田代町は歴史を閉じました。

町のシンボル

1973年5月1日に町花として「やまふじ」、町木として「やまもも」が制定されました。1975年3月14日には町章が、1979年1月1日には町民憲章がそれぞれ制定されています。1996年にはカブトムシをモチーフとしたイメージキャラクターが設定され、1997年1月に「でんしろう」と名付けられました。でんしろうは、合併後も錦江町のイメージキャラクターとして活躍しています。

姉妹町

1969年6月7日に、鹿児島県最南端の与論町と姉妹盟約を締結しました。これは、与論島民が1946年に満州から引き揚げ、田代村に新たに開拓した盤山集落が縁となっています。合併後の2006年6月7日には、改めて錦江町と与論町との間で姉妹盟約が締結されました。

産業

田代町の基幹産業は農林業です。2000年の国勢調査によると、就業率は第一次産業が39.7%、第二次産業が23.3%、第三次産業が37.0%です。1985年には第一次産業の就業率が50%を超えていましたが、減少傾向にあります。

農業協同組合については、1948年5月1日に田代村農業協同組合として発足し、その後、合併を経て現在の鹿児島きもつき農業協同組合（JA鹿児島きもつき）となりました。2003年5月以降、JA鹿児島きもつきが田代町の指定金融機関となっていました。

商工業

2003年度には町内に145の商工業者がおり、そのうち135が小規模事業者でした。田代町では麓地区を中心に商業地域が形成されており、1962年3月31日には田代町商工会が設立されました。合併後の2010年4月には錦江町商工会が発足しています。かつては、スーパーマーケットとしてAコープ田代店がありましたが、2004年5月末に閉店しました。

教育

田代町内には、麓地区・川原地区に田代小学校と田代中学校、大原地区に大原小学校と大原中学校がありました。田代小学校は1872年に「都城県第七十二郷校」として設置され、その後、何度か名称を変更しました。1888年には川原地区の富尾小学校を統合しました。1922年から1965年までは花瀬分校が設置されていました。

大原小学校は1887年に簡易小学校として発足し、その後、田代小学校の分校となりましたが、1915年に再独立しました。1947年から1958年までは内之牧分校が設置されていました。両中学校は2005年に統合され、新たに錦江町立田代中学校となりました。

南大隅高等学校田代分校（閉校）

1948年に鹿児島県立根占高等学校の田代分校として設置され、1954年に田代村立田代高等学校として独立しました。その後、1970年に鹿児島県立南大隅高等学校田代分校となり、1987年3月末に閉校しました。跡地には民間企業が進出しています。

交通

道路

地理の項目で述べたように、東西方向に国道448号、南北方向に主要地方道の鹿屋吾平佐多線が通っています。国道448号は大[[根占町]]・内之浦町方面へ、鹿屋吾平佐多線は鹿屋市・佐多町方面へ続いています。

バス

田代町域にバス路線が開設されたのは、1923年から1925年のことです。当初は大根占自動車と南統自動車の2社がありましたが、合併や統合を経て、現在は三州自動車（いわさきグループ）が運行しています。

脚注

参考文献

田代町教育委員会『新編田代町郷土史』田代町、2005年