日吉町吉利

日吉町吉利（ひよしちょうよしとし）

鹿児島県日置市に位置する日吉町吉利は、旧薩摩国日置郡に属し、歴史と自然に彩られた地域です。かつては吉利村として独立した自治体でしたが、町村合併を経て現在に至ります。この記事では、吉利の歴史、地理、文化、産業、そして現代の姿を詳細に解説します。

地理

日置市の西部に位置し、東部は山地、中央部から西部にかけては丘陵地帯が広がります。西側は東シナ海に面しており、吹上浜の一部を構成する砂浜が特徴的です。主要な河川として大川と永吉川が流れ、地域の自然環境を豊かにしています。

隣接地域は、北に日吉町日置、南に吹上町永吉、東に伊集院町古城、伊集院町飯牟礼、鹿児島市入佐町（旧松元町）が位置し、西は東シナ海に面しています。

歴史

古代

吉利では、縄文時代から古墳時代にかけての遺跡が多数発見されています。原口遺跡からは縄文時代後期から古墳時代にかけての土器や石器、住居跡が見つかっており、六ツ坪遺跡からは弥生時代の竪穴建物跡が発見されています。これらの遺跡は、古代からこの地に人々が生活していた証です。

中世

吉利という地名は鎌倉時代から見られ、当時は薩摩国日置北郷の名田でした。日置荘の一部であり、1185年以前には北区に領家政所が置かれていました。領家と地頭の間で支配権を巡る争いが絶えず、1324年には下地中分という土地の分割が行われました。この下地中分の境界線は、吉利名の中心集落を二分するように引かれ、その様子を描いた「薩摩国日置北郷下地中分絵図」は国指定の重要文化財となっています。

南北朝時代には、伊集院氏の支配下に入り、その後は桑波田氏の支配を経て、戦国時代には島津氏の支配下となりました。

近世

戦国時代には桑波田氏が領有していましたが、島津忠良の内紛により、島津氏の支配下に入りました。1543年には吉利氏を名乗る島津氏一族が登場し、その後伊集院氏を経て禰寝氏が吉利の領主となりました。禰寝氏は後に小松氏と改姓し、江戸時代には小松氏が私領として吉利を治めました。

江戸時代、吉利郷は吉利村のみで構成され、村高は3,137石余と記録されています。村は東西に分かれ、里方限と木場方限で異なる土地利用が行われていました。また、上ノ浜（吉利浦）では漁業も行われ、イワシなどが獲られていました。

近代・現代

明治維新期には、吉利の領主であった小松清廉（小松帯刀）が明治維新に貢献し、版籍奉還を率先して行いました。1889年の町村制施行により吉利村が成立し、1955年には日置村と合併して日吉町となりました。さらに2005年には周辺の町と合併し、日置市の一部となりました。

2000年には、一部地域が他の字に編入され、2001年には、松元町との間で一部区域の交換が行われました。また、2005年の日置市誕生に伴い、大字名が「吉利」から「日吉町吉利」に変更されました。

地名の由来

「日吉町郷土誌上巻」によれば、吉利の地名は、吉利名の開拓祖である「吉利太夫入道」に由来するとされています。

自然公園・自然保護地区

吉利の西端部は、鹿児島県立自然公園「吹上浜金峰山県立自然公園」の一部に指定されており、豊かな自然が保護されています。

河川

大川
永吉川

文化財

市指定文化財

園林寺跡：禰寝氏（禰寝・小松家）歴代墓所。小松清廉（小松帯刀）の墓があります。
吉利神社
深固院跡
鬼丸神社
鹿児島塚跡
六代木像
乳地蔵

その他吉利に関連する文化財

薩摩国日置北郷下地中分絵図（国指定重要文化財）：東京大学史料編纂所所蔵。
吉利郷惣絵図（鹿児島県指定有形文化財）：吹上歴史民俗資料館所蔵。

産業

農畜産業

かつては甘藷や粟の栽培が盛んでしたが、昭和時代後期から酪農畜産が中心となりました。畑作構造改善事業により、畑地の大型化が進み、機械化が進んでいます。北方地区ではミカンやポンカンの栽培も行われています。

漁業

明治時代には漁業は小規模でしたが、イワシ、サバ、アジ、コノシロなどが獲られていました。

商工業

明治時代から大正時代にかけては、商店や旅館が立ち並び、吉利駅前にも商店がありました。また、日置瓦と呼ばれる瓦の産地でもありましたが、近年は衰退傾向にあります。

吉利村の行政

1889年から1955年まで存在した吉利村の行政について。

歴代村長

（省略）

議会

1889年に村会が整備され、1947年に吉利村議会となりました。1955年の合併時に吉利村議会議員であった者は日吉町議会議員として在任することとなりました。

消防

1888年に吉利村消防組合が組織され、1939年に警防団に改組、戦後に消防団に移行しました。

財政

1955年の合併時に財産はすべて日吉町に引き継がれました。

合併時点の統計情報

（省略）

隣接していた自治体

日置村、伊集院町、上伊集院村、永吉村

人口

1920年から1950年までの吉利村の人口推移と、1995年以降の大字吉利、日吉町吉利の人口推移

（省略）

祭事

せっぺとべ：鬼丸神社で毎年6月第1日曜日に行われる御田植祭。1595年から続く伝統的な祭りです。

施設

公共

日置市吉利地区公民館
日置市扇尾地区公民館

教育

吉利保育園
扇尾保育園

郵便局

吉利郵便局：1874年に郵便事務を開始。

寺社

吉利神社：江戸時代には吉利郷の郷社。
鬼丸神社：江戸時代には吉利村の村社。島津家ゆかりの稲荷大明神を合祀。
伊勢神社：疱瘡の神として崇拝されている。
清浄寺：浄土真宗の寺院。

かつて存在した教育施設

日置市立吉利小学校：2018年に日吉小学校に統合され廃校。
日置市立扇尾小学校：2016年に日置小学校に統合され廃校。
日吉町立吉利中学校：1972年に日置中学校と統合され廃校。

交通

道路

国道270号
鹿児島県道35号永吉入佐鹿児島線
鹿児島県道2号加世田日吉自転車道線（吹上浜砂丘自転車道）

鉄道

かつて鹿児島交通枕崎線が通っており、吉利駅が設置されていましたが、1983年に廃止。

バス

鹿児島交通のバスが運行しています。

出身人物

野村直邦：海軍大臣、海軍大将
入鹿山且朗：医学者、衛生学者。水俣病の原因物質特定に貢献。

まとめ

日吉町吉利は、豊かな自然と長い歴史を持つ地域です。古代から人が住み、中世には荘園の一部として、近世には有力な領主によって治められました。明治維新の偉人、小松帯刀を輩出した地でもあります。現代では日置市の一部として、その歴史と文化を継承しつつ、新たな発展を遂げています。

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