肝属山地

肝属山地（きもつきさんち）

肝属山地は、九州南部、大隅半島の南端に位置する山地です。国見山地とも呼ばれ、北東から南西にかけて約50kmの長さにわたって連なっています。山地の北側には肝属平野が広がり、北東側は志布志湾、南東側は大隅海峡（太平洋）、西側は鹿児島湾に面しています。この山地は、鹿児島県南大隅町、錦江町、肝付町、鹿屋市にまたがっており、地域に豊かな自然と多様な景観をもたらしています。

地理

肝属山地の南部沿岸部は、黒潮の影響を受けるため、冬でも比較的温暖な気候が保たれています。このため、亜熱帯性の植物が豊富に見られます。特に稲尾岳の山頂付近には照葉樹の原生林が広がっており、この地域は「森林生態系保護地域」に指定されています。かつては、木炭や樟脳などの資源が豊富で、それらを運搬するための森林鉄道も存在していました。また、高山町ではイスノキを使ったそろばん作りが盛んで、「大隅算盤」として知られています。この地域は、自然の恵みと人の知恵が融合した場所といえるでしょう。

主な山

肝属山地には、以下のような特徴的な山々があります。

国見山（標高886m）
黒尊岳（標高908.5m）
甫与志岳（標高967m）：肝属山地の最高峰です。
八山岳（標高940.5m）
稲尾岳（標高930m）
枯木岳（標高959m）
* 木場岳（標高891m）

これらの山々は、山地を形成する主要な要素であり、多様な地形と自然環境を形作っています。

地質

肝属山地の地質は、その形成過程において独特の歴史を持っています。この山地は、かつて九州山地の延長線上にあった山脈が、地殻変動によって分断され、独立した山地となったものです。山地の大部分は、「大隅花崗閃緑岩」と呼ばれる花崗岩または閃緑岩で構成されており、九州南部では屋久島や大崩山と並ぶ、大規模な花崗岩地帯（バソリス）を形成しています。この花崗岩は、約1200万年から1400万年前に形成されたもので、風化が進みやすく崩れやすいという特徴があります。山地の北西部には、阿多カルデラから噴出した阿多火砕流を起源とする溶結凝灰岩が分布しており、南西部の佐多岬周辺では、古第三紀に堆積した地層が見られます。これらの地質学的特徴は、肝属山地の多様な地形と自然環境を理解する上で重要な要素です。

まとめ

肝属山地は、大隅半島の自然と歴史を象徴する場所です。温暖な気候と豊かな自然、独特の地質構造が織りなす景観は、訪れる人々を魅了します。また、木炭や樟脳、そろばん作りなどの歴史的な産業は、地域文化の深さを物語っています。この山地は、自然と人々の暮らしが調和した、魅力あふれる場所と言えるでしょう。

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