田口勝彦 (テレビドラマ監督)

田口勝彦：特撮・アニメ界を彩った鬼才

田口勝彦（1931年1月24日 - 2020年4月27日）は、映画、テレビドラマ、アニメーションと幅広いジャンルで活躍した、日本の監督、演出家、そして脚本家です。岡山県津山市出身で、その才能は東映という舞台で開花しました。彼は、山崎久、田口章一というペンネームを使い分け、作品に独自の彩りを添えました。

東映でのキャリア

日本大学芸術学部を卒業後、田口は東映に入社し、編集業務を経て演出部に異動しました。初期には『ファンキーハットの快男児シリーズ』で助監督を務め、その後、東映東京制作所でテレビドラマの監督として活動を開始しました。1966年の『悪魔くん』での監督デビューを皮切りに、初期の「仮面ライダーシリーズ」や「スーパー戦隊シリーズ」ではローテーション監督として、これらのシリーズを根幹から支えました。

アニメーション演出家としての才能

田口はアニメーション演出家としてもその才能を発揮しました。脚本家として参加していた『宇宙大帝ゴッドシグマ』では、チーフディレクターが降板したことを受け、第11話からチーフディレクターに就任。その後の展開に田口の独自のセンスが色濃く反映され、斬新なストーリー展開は当時のアニメファンを驚かせました。続く『百獣王ゴライオン』でもチーフディレクターを務め、物語開始前に地球が戦争で滅んでいるという、ロボットアニメとしては異色の設定で話題を呼びました。この作品は後にアメリカで『ボルトロン』として大ヒットし、海外でもその名を知られることとなりました。また、『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』では演出を担当。この作品はテレビ放送ながら30%を超える高視聴率を記録し、後に劇場公開されるという快挙を成し遂げました。

実写作品における演出

実写作品においても、田口は数々の作品でその手腕を発揮しました。特に『超人バロム・1』ではパイロット監督と最終回を含む、全35話中25話という最多演出を担当し、シリーズディレクターに近い役割を担いました。また、『仮面ライダー』の2号ライダー登場時期や『秘密戦隊ゴレンジャー』ではローテーション演出を担当し、作品の節目となる重要なエピソードの演出を数多く手がけました。

脚本家としての活躍

脚本家としては、「山崎久」「田口章一」というペンネームを使い分けました。特に「田口章一」名義では、長浜忠夫監督のロボットアニメ作品で、重厚な人間ドラマを描くシナリオを数多く執筆しました。東映の社員でありながら、タツノコプロ作品の脚本も手掛けるなど、その才能は多岐にわたりました。

その後の活動

1991年に東映を退社した後、専門学校の講師などを務めました。2020年4月27日、89歳でその生涯を閉じました。

エピソード

『仮面ライダー』

『仮面ライダー』への参加は、番組初期から東映のプロデューサーに声がかかったものの、他作品との兼ね合いで、当初は山崎久名義で脚本を担当し、その後、監督として参加しました。番組制作にあたり、田口はライバル番組であるウルトラシリーズに対抗するテーマとして「恐怖」を掲げ、その傾向は『超人バロム・1』で更に発展させていきました。また、「仮面ライダーがジャンプすると場所が変わる」という演出は、田口が確立したものです。

『秘密戦隊ゴレンジャー』

『秘密戦隊ゴレンジャー』では、各話でメインとなるキャラクターを絞り、そのキャラクターを強調する演出を行いました。しかし、この演出方法は他の出演者から反感を買うこともあったようです。敵である怪人についても、個性を際立たせ、怪人の戦略や戦術に応じてゴレンジャー側の行動を変化させることで、視聴者を飽きさせない工夫を凝らしました。後半にコミカルな怪人が増えたことについては、「個性豊かになりすぎた」としながらも、それが仮面ライダーシリーズとの大きな違いだと評価しています。特撮に使える予算や技術が限られていたため、日常的な道具を使った現場での特撮を多く行いました。この手法は視聴者に現実との繋がりを認識させることができ、田口自身も毎回アイデアを練るのを楽しんでいたと語っています。

主な監督作品

劇場映画

ガンマー第3号 宇宙大作戦（協力監督）
ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー

テレビドラマ

悪魔くん
キャプテンウルトラ
ジャイアントロボ
河童の三平 妖怪大作戦
柔道一直線
ブラックチェンバー
プレイガール
フラワーアクション009ノ1
江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎
仮面ライダーシリーズ
ガッツジュン
好き! すき!! 魔女先生
超人バロム・1
どっこい大作
イナズマン
イナズマンF
秘密戦隊ゴレンジャー
アクマイザー3
ザ・カゲスター
超神ビビューン
ジャッカー電撃隊
5年3組魔法組
スパイダーマン

テレビアニメ

ピンク・レディー物語 栄光の天使たち
宇宙大帝ゴッドシグマ
百獣王ゴライオン
宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち

主な脚本作品

田口勝彦名義

劇場映画

青春賛歌 暴力学園大革命
男組

テレビドラマ

プレイガール
全員集合!7人の仮面ライダー!!（構成）

テレビアニメ

ベムベムハンターこてんぐテン丸
サイコアーマー・ゴーバリアン

山崎久名義

テレビドラマ

仮面ライダー
超人バロム・1
イナズマンF
どっこい大作
仮面ライダー (スカイライダー)
仮面ライダーBLACK

テレビアニメ

ピンクレディー物語 栄光の天使たち
宇宙大帝ゴッドシグマ

田口章一名義

テレビアニメ

破裏拳ポリマー
宇宙の騎士テッカマン
超電磁ロボ コン・バトラーV
ブロッカー軍団IVマシーンブラスター
超電磁マシーン ボルテスV|超電磁マシーン_ボルテスV
無敵超人ザンボット3
闘将ダイモス
無敵鋼人ダイターン3
未来ロボ ダルタニアス
宇宙大帝ゴッドシグマ

コメンタリー出演

超人バロム・1DVD映像特典 - 平山亨との対談

脚注

注釈

出典

参考文献

『テレビマガジン特別編集 変身ヒーロー大全集』講談社、1995年。
岩佐陽一 編『秘密戦隊ゴレンジャー大全 仮面怪人大百科』双葉社、2001年。
『KODANSHA Official File Magazine 仮面ライダー』 Vol.5《仮面ライダーX》、講談社、2004年。
『宇宙船別冊 仮面ライダー怪人大画報2016』ホビージャパン、2016年。

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