甲斐庄正親

甲斐庄正親の生涯と創作物語

甲斐庄正親（かいのしょう まさちか）は、江戸幕府の旗本であり、甲斐庄氏の4代目として知られています。彼の通称は伝八郎や喜右衛門であり、官位は従五位下の飛騨守を拝命しました。正親は、長崎奉行を務めた甲斐庄正述の子として生まれ、兄弟には土屋正敬や宮崎重政などがいます。彼の妻は高木守久の娘であり、子供には正永や加藤茂雅などがいます。

正親は慶安元年（1648年）に3代将軍徳川家光に初めて謁見し、その後、承応3年（1654年）には小姓組に入りました。寛文6年（1666年）からは使番として活動し、但馬、丹波および北陸地方の巡見使としても赴任しました。さらに、寛文12年（1672年）には使番から御勘定頭（勘定奉行）に就任し、延宝8年（1680年）までその役職を務めました。その後、江戸南町奉行に就くことになり、経済的な増加を重ね、天和2年（1682年）には4000石という大名となりました。

元禄3年（1690年）、正親は南町奉行在任中に死去しました。彼の子供である正永が後を継ぎ、普請奉行としても活躍しました。

創作での甲斐庄正親の位置づけ

甲斐庄正親は、江戸時代の放火犯である八百屋お七にまつわる裁判において、多くの創作物語の中心人物として描かれることがあります。特に、天和3年（1683年）の裁判における彼の台詞や行動は、後の文献に多数登場します。しかし、これらの物語はあくまで創作であり、当時の史料によって裏付けることはできません。

八百屋お七の物語は数多くの作家によって異なる形で描かれており、特に人情話としての側面が強調されています。たとえば、放火犯に対する法律が明確に設けられたのはお七の死から40年後の享保8年（1723年）になってからです。それ以前においては、年少の殺人犯に対する寛容な措置が設けられていましたが、放火に関しては明確な規定が存在しなかったことも注目に値します。特に『天和笑委集』第10章には、13歳の放火犯が火刑にされたという記録も残されています。

井原西鶴の『好色五人女』や紀海音の『八百屋お七』、為永太郎兵衛の『潤色江戸紫』など、八百屋お七に関する物語には、裁判の場面がないか、あまり詳しく扱われていないことがわかります。しかし、後年の馬場文耕による『近世江都著聞集』では、お七の年齢を巡って奉行が助けようとする場面が強調され、彼の登場が後の創作に大きな影響を与えました。このように、甲斐庄正親の人物像は、江戸時代のフィクションによって巧妙に形作られているのです。

正親が登場する作品の一例として、佐々木裕一著の小説『浪人若さま新見左近』が存在します。彼の名はその中でどのように扱われているのかを知ることは、江戸時代の社会や人々の想像力がどのように発展していたかを垣間見る良い機会となるでしょう。

このように、甲斐庄正親はただの歴史上の人物ではなく、創作物語の中でさまざまな形で生き続けていることを示しています。

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