畠山義綱

畠山義綱（はたけやま よしつな）

畠山義綱は、戦国時代の能登国（現在の石川県北部）を支配した戦国大名であり、能登畠山氏の第9代当主です。

生涯

家督継承

第8代当主・畠山義続（はたけやま よしつぐ）の子として生まれました。天文21年（1551年）、父・義続が前年に発生した能登天文の内乱の責任を取り隠居したため、義綱が家督を継承しました。しかし、初期の義綱政権は、父・義続が後見人として実権を握っていたため、義綱自身が主体的に政治を行うようになるのは弘治元年（1555年）以降となります。

大名専制支配の確立

弘治元年（1555年）、義綱は、重臣たちが政治を壟断する「畠山七人衆」を排除するため、中心人物であった温井総貞（ぬくい ふささだ）を父・義続と共に暗殺しました。この暗殺をきっかけに、温井氏と親しい三宅氏が加賀一向一揆と結び大規模な反乱を起こし、一時は外浦を占領されるなどの混乱が生じました（弘治の内乱）。しかし、この内乱は永禄3年（1560年）頃までに鎮圧され、この過程で義綱側の士気が高まり、大名専制支配を確立しました。

永禄3年（1560年）から永禄9年（1566年）にかけては、能登畠山家にとって比較的安定した時期でした。国内での家臣同士の争いはなく、将軍家への贈答を再開したり、気多社の造営を朝廷の許可を得て行うなど、外交や文化事業も積極的に行いました。永禄5年（1562年）には、上杉謙信に攻められた神保長職（じんぼ ながもと）の仲介を依頼され、争いを調停し合意させるなど、外交手腕を発揮しています。また、同じ年には正親町天皇の勅許を得て能登一宮の再建を行い、朝廷や幕府に多額の寄進を行いました。

永禄九年の政変とその後

しかし、義綱による大名専制支配に反発した長続連（ちょう つぐつら）、遊佐続光（ゆさ つぐみつ）、八代俊盛（やしろ としもり）ら重臣たちが、永禄9年（1566年）にクーデターを起こし、義綱とその父・義続を追放しました（永禄九年の政変）。これにより、義綱は縁戚関係にあった六角氏の領地である近江国坂本へ亡命しました。

亡命後の永禄11年（1568年）には、義綱から義胤（よしたね）へと改名しています。能登奪回を目指す義綱は、六角氏の支援や上杉謙信、神保長職らとの連携により、永禄11年（1568年）に能登へ侵攻しましたが、失敗に終わり、その後も復権を果たすことはできませんでした。

当主の地位奪回に奔走していた永禄9年から同12年にかけて、義綱と医者の曲直瀬道三（まなせ どうさん）との交流が確認されています。これは能登畠山氏の歴代当主が文化を尊重し、医道に深い関心を持っていたこと、そして義綱自身が病気の治療を希望していたことが背景にあると考えられます。

その後、豊臣秀吉の家臣になったという史料も存在しますが、定かではありません。義綱は文禄2年（1593年）12月21日に近江国伊香郡（現在の滋賀県長浜市余呉町）の余吾浦で死去しました。

人物・逸話

北陸の能登という地方にいながら、六角義賢（ろっかく よしかた）や足利義昭（あしかが よしあき）といった中央の有力者とも交流があり、中央政権にも関与していました。
永禄九年の政変後、一時「義胤」と改名しましたが、数年後には元の「義綱」に戻しています。近江坂本に同行した側近の富来綱盛（とぎ つなもり）もこれにならって富来胤盛（とぎ たねもり）と改名しています。
後世に書かれた書物には「義則」（よしのり）と記されていることが多いですが、古文書などの一次史料には「義則」の名は見られません。
花押は、祖父・畠山義総（はたけやま よしふさ）のものによく似ています。
近臣に飯川光誠（いいがわ みつまさ）がおり、義綱政権においては年寄衆として補佐し、近江亡命後も外交などで活躍しました。
二人の息子、畠山義慶（はたけやま よしひろ）と畠山義隆（はたけやま よしたか）は、重臣たちによって傀儡君主として擁立されましたが、父よりも早く亡くなっています。

脚注

東四柳史明「畠山義綱考」『国史学』88号、1972年。
宮本義己「畠山義綱と医道伝授（一）」『日本医史学雑誌』18巻4号、1972年。
宮本義己「畠山義綱と医道伝授（二）」『日本医史学雑誌』19巻1号、1973年。
『新修七尾市史14 通史編1 原始・古代・中世』2011年3月。

関連項目

* 畠山氏

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