登美直名

登美直名の生涯と業績

登美直名（とみ の ただな）は、平安時代初期の貴族で、用明天皇の子孫にあたります。彼は従五位下という官位を持ち、豊後権守としても知られています。直名はその経歴において多くの役職を歴任し、特に地方官としての活動が際立っています。

経歴

直名は弘仁13年（822年）に主膳監正の職に任命され、以降は淳和朝の下で美濃大掾、近江大掾、大和介といった地方の役職を歴任しました。彼の昇進過程を見ると、天長4年（827年）には従五位下に叙爵され、その後も承和朝での転任が続きます。承和2年（835年）には大判事に就任し、さらに数年後には散位頭、少納言と重要な京官職を務めることになります。

直名の政治活動は華やかではありましたが、承和12年（845年）には法隆寺の僧・善愷による訴訟に巻き込まれます。善愷は直名が寺の財産を不正に扱い、その利益を得たと告発しました。初めに遠流の判決を受けたものの、承和13年（846年）に右少弁・伴善男の主張により訴訟は無効とされ、無罪となりました。この事件は「善愷訴訟事件」として知られます。

無罪が確定した後、直名は承和14年（847年）に大宰少弐として地方官に転任し、さらに嘉祥2年（849年）には豊後権守に任命されます。しかし、その同年の12月には謀反の疑いがかけられ、流罪となる運命となります。幸運にも嘉祥3年（850年）には罪が赦され、放免されました。

仁寿3年（853年）、直名は62歳でこの世を去ります。彼の最後の官位は、前の豊後権守であり、従五位下でした。

人物像

直名は非常に優れた才学を持ち、弁舌にも長けていました。しかし、彼には一つの問題がありました。それは反発する者に対して報復を企てる悪癖があり、これが彼の評判を損ねる原因となりました。善愷による訴訟事件において、彼は弁官を除名に追い込むなど、その強権的な姿勢が随所に現れています。

当初の審理では、正躬王ら弁官が直名を国家における奸臣であり、家庭においても欲深く人の道に反する者と評したという事実もあり、彼の名声には注目すべき点が多かったことが伺えます。

官歴

直名の官歴は以下の通りです。

• - 弘仁13年（822年） 2月：主膳監正
• - 天長2年（825年） 7月：美濃大掾
• - 天長3年（826年） 正月：近江大掾
• - 時期不詳：正六位上
• - 天長4年（827年） 正月21日：従五位下
• - 天長7年（830年） 正月：大和介
• - 承和2年（835年） 9月：大判事
• - 承和9年（842年） 正月：散位頭
• - 承和11年（844年） 2月：少納言
• - 承和14年（847年） 正月：大宰少弐
• - 嘉祥2年（849年） 1月：従五位下 8月20日：豊後権守
• - 嘉祥3年（850年） 3月18日：放免
• - 仁寿3年（853年） 6月10日：卒去（前豊後権守従五位下）

参考文献

• - 森田悌『続日本後紀』（上・下巻）（講談社学術文庫、2010年）
• - 宝賀寿男『古代氏族系譜集成』（古代氏族研究会、1986年）

以上が登美直名に関する詳細情報です。彼はその複雑な経歴と人間性により、平安時代の歴史に名を刻んでいます。

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