矢集虫麻呂

矢集虫麻呂の人物像とその業績

矢集虫麻呂（やつめ／やずめのむしまろ、生没年不詳）は、奈良時代に活躍した官人であり、特に明法家として知られています。彼の姓は宿禰で、氏は矢集、名は時に虫万呂とも記されています。虫麻呂は、外従五位下や大学頭といった官位を持ち、多くの功績を残しました。

出自と家系

矢集氏（あるいは矢集連、箭集連）は、神話に登場する神饒速日命の六世孫にあたる伊香我色雄命の直系とされ、物部氏の一族に属する天孫系氏族です。この氏名は美濃国可児郡矢集郷、現在の岐阜県可児市矢戸に由来していると考えられています。また、矢部の伴造氏族であったという説も存在します。彼の氏の姓は元々連であったが、八色の姓の制定に伴い宿禰に改姓しました。

経歴の概要

矢集虫麻呂の歴史的な活動は、奈良時代の重要な法整備や官職の任命に関連しています。養老5年（721年）には、元正天皇が選定した優れた学業を持つ官人として認められ、塩屋古麻呂と共に多くの物資を与えられました。この時の位階は正六位上でした。

さらに、翌養老6年（722年）には、養老律令の編纂において主導的な役割を果たし、陽胡真身、そして塩屋吉麻呂と共に特別に表彰され、5町の功田（田地）を授与されました。このことからも、虫麻呂の学識と貢献が高く評価されていたことが窺えます。

その後、聖武天皇の天平3年（730年）には外従五位下に昇進し、天平4年（731年）10月には大学頭に任命され、より高い地位での業務を担いました。彼は、学問のみならず、官職としても多岐にわたる責任を持っていました。

難題に対する評価

孝謙天皇の時代にあたる天平宝字元年（758年）に行われた功田の等級設定において、矢集虫麻呂は養老律令の撰定者としてその業績が評価されました。この際、彼は「下功」として位置付けられ、子孫においてもその権利が保持されることが決定されました。しかし、その後桓武朝の延暦25年（806年）に、彼の子孫が断絶したため、功田は朝廷によって収公されました。

文化的功績

矢集虫麻呂はまた、『懐風藻』に記載された漢詩作品を通じて文化的な影響も及ぼしました。彼は特に五言律詩を二首残しており、そのうちの一首は長屋王の邸宅で行われた宴席で詠んだものです。これにより、虫麻呂は単なる官人としてだけでなく、詩人としての才能も持ち合わせていたことが確認できます。

官歴まとめ

彼の官歴は次の通りです。

• - 天武天皇13年（684年） 12月2日：連姓から宿禰姓に改姓
• - 養老5年（721年） 正月27日：褒賞として物資を賜る
• - 養老6年（722年） 2月27日：功田を賜る
• - 天平3年（730年） 正月27日：外従五位下に昇叙
• - 天平4年（732年） 9月5日：大判事、10月17日：大学頭

結論

矢集虫麻呂は、奈良時代の重要な官人であり、その多岐にわたる業績から歴史的な存在感を示しました。彼の学識や詩才は、当時の日本の文化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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