石冰

石冰（せき ひょう）

石冰は、西晋末期の動乱期に活動した流民勢力の首領であり、張昌の反乱に深く関わりました。彼の生涯は、当時の社会情勢と密接に結びついています。

生涯

張昌の反乱への参加

太安2年（303年）、張昌が江夏で反乱を起こすと、石冰はこれに呼応し、反乱軍に加わりました。張昌は石冰に軍を分け与え、東の江州・揚州の二州を攻撃させました。石冰はまず揚州に侵攻し、揚州刺史の陳徽を破り、周辺の郡を次々と制圧しました。彼の勢いを恐れた各地は、抵抗せずに石冰に従属しました。

さらに石冰は江州も攻略し、配下の将軍たちに武陵・零陵・豫章・武昌・長沙といった地域に進軍させ、これらを全て陥落させました。また、臨淮の封雲も兵を挙げて徐州に侵攻し、石冰に呼応しました。これにより、張昌の勢力は五州に拡大しましたが、州牧や太守に任命されたのは盗賊や小人ばかりで、略奪が横行したため、民衆の支持を失っていきました。

同年、張昌は陶侃らに敗れて兵が離散しましたが、石冰は引き続き揚州で勢力を維持しました。

江東での挙兵と敗北

12月、議郎の周玘と元南平内史の王矩が江東で挙兵し、石冰を攻撃しました。元呉興郡太守の顧秘は都督揚州九郡諸軍事に推され、石冰が設けた官吏を倒すよう各地に呼びかけました。元侍御史の賀循も会稽で挙兵し、廬江内史の華譚や葛洪・甘卓も顧秘に呼応しました。石冰は配下の羌毒に数万の兵を与えて周玘を防がせましたが、羌毒は敗れて討たれました。石冰は本拠地を臨淮から寿春に移しました。

征東将軍の劉準は、石冰が寿春に現れたことを知り恐れましたが、後続部隊を率いて寿春に入った広陵度支の陳敏は、「石冰軍は徴兵を嫌って集まった烏合の衆に過ぎません。私が必ず打ち破ってみせます」と進言しました。劉準は陳敏に兵を増援し、出撃を命じました。

陳敏は、石冰軍と数十回にわたって戦い、全てに勝利しました。そして周玘と共に、石冰の本拠地である建業に進軍しました。

逃亡と最期

永安元年（304年）3月、石冰は敗北を悟り、北へ逃亡し、かつて徐州で呼応した封雲のもとに身を寄せました。しかし、封雲の司馬である張統は石冰と封雲を斬り、晋軍に降伏しました。これにより、揚州・徐州における反乱は鎮圧され、石冰の勢力は完全に崩壊しました。

石冰の生涯は、西晋末期の混乱期における地方勢力の台頭と没落を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

参考文献

『晋書』巻100 列伝第70
『資治通鑑』巻85 晋紀第7

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