石頭希遷

石頭希遷（せきとう きせん）

石頭希遷は、中国唐代に活躍した禅僧であり、その名は禅宗の歴史において重要な位置を占めています。諡は無際大師、俗姓は陳、端州高要県の出身です。

生涯

石頭希遷は、禅宗六祖である慧能に師事しましたが、慧能の遷化後、その弟子である青原行思のもとで修行を重ね、法を継承しました。青原行思の門下からは、石頭希遷の系統を指す「石頭宗」と呼ばれる一派が形成されました。彼の名である「石頭」は、南嶽衡山において岩の上に庵を結んだことに由来します。

当初、石頭希遷の存在はさほど目立たなかったようですが、その門下からは薬山惟儼、天皇道悟、丹霞天然といった著名な禅僧が輩出され、次第にその勢力を拡大していきました。特に、馬祖道一が率いる洪州宗とは、禅宗界において互いに影響を与え合うほどの存在となりました。ただし、天皇道悟や丹霞天然は、石頭希遷だけでなく馬祖道一のもとでも修行をしていたように、両派の交流は盛んであったと考えられます。また、馬祖道一の弟子である五洩霊黙が石頭希遷のもとにいたという事実からも、当時の禅宗が多様な交流を通じて発展していたことが窺えます。

肉身仏

曹洞宗の大本山である總持寺には、石頭希遷のものとされる肉身仏（ミイラ）が安置されています（非公開）。この肉身仏は、元々中国の湖南省にある寺院に祀られていましたが、辛亥革命の際に兵火に見舞われたため、日本人が保護し日本へ持ち帰ったと伝えられています。大正博覧会にも出展された記録があり、その時の写真が残されています。その後、青梅市で保管されていた時期を経て、日本ミイラ研究グループの手によって、1975年より總持寺で祀られることとなりました。この肉身仏の存在は、石頭希遷が後世にまで影響を与えている証左と言えるでしょう。

関連事項

石頭希遷の思想や影響は、禅宗の発展に深く関わっています。彼の系統からは、後の禅宗に大きな影響を与えた法眼宗、潙仰宗、雲門宗といった宗派が派生しました。また、寒山寺は彼の足跡を偲ぶ上で重要な寺院です。

参考文献

石井修道『石頭　自己完結を拒否しつづけた禅者』「唐代の禅僧3」臨川書店、2013年。ISBN 4653039933
日本ミイラ研究グループ 編『日本ミイラの研究』平凡社、1969年8月7日。
* 松本, 昭『日本のミイラ仏』臨川書店、1993年10月30日。


石頭希遷は、その生涯を通して禅の真髄を追求し、多くの人々に影響を与え続けました。彼の思想は、現代においてもなお、禅宗における重要な指針となっています。

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