砂嚢

砂嚢：多様な生物の消化器官

砂嚢は、鳥類、爬虫類、ミミズ、一部の魚類、そして昆虫や軟体動物など、様々な動物に見られる消化器官です。厚い筋肉層を持つ袋状または管状の器官で、食べたものをすりつぶす役割を担っています。鳥類では「筋胃」とも呼ばれ、消化を助けるために小石などを飲み込む種もいます。昆虫や軟体動物の中には、砂嚢の内側にキチン質の小板や歯のような構造を持つものも存在します。その強力な筋肉構造から、生物学研究の材料としても利用されています。

名称の由来

英語のgizzardは、中世英語のgiserに由来し、古フランス語、さらに遡るとラテン語のgigeria（内臓）に繋がります。ラテン語と同様に印欧祖語から派生したペルシャ語のjigar（肝臓）が語源ではないかという説もあります。

日本語では「砂嚢」の他に「砂肝」「砂ずり」といった俗称があり、家禽類の砂嚢の中に砂礫が見られることに由来します。

鳥類の砂嚢

全ての鳥類が砂嚢を持っています。鳥は食べた物をまず素嚢に貯め、その後消化液を分泌する前胃を経て、砂嚢に送ります。砂嚢では、あらかじめ飲み込んだ砂礫を使って食べ物をすりつぶし、消化を促進します。そのため、砂嚢の筋肉層は非常に厚くなっています。

砂嚢の砂：胃石

歯を持たない動物の中には、消化を助けるために小石や砂を飲み込む種がいます。鳥類もその一つですが、全ての鳥類が砂礫を飲み込むわけではありません。砂礫を飲み込む鳥類では、砂嚢の中で砂礫が歯の代わりとなり、種子などの食べ物を砕いて消化を助けます。これらの砂礫は「胃石」と呼ばれ、砂嚢の中で磨耗し、滑らかで角が取れた形状になります。胃石は咀嚼だけでなく、胃の中を洗浄する役割も果たしています。しかし、あまりに滑らかになりすぎると咀嚼に適さなくなるため、そのような胃石は吐き戻されて排出されます。

鳥類以外の砂嚢

恐竜

鳥類の祖先である多くの恐竜も、鳥類と同様の砂嚢を持っていたと考えられています。プシッタコサウルス、マッソスポンディルス、プラテオサウルス、オメイサウルス、アパトサウルス、バロサウルス、ディクラエオサウルス、セイスモサウルスなど、複数の恐竜化石から胃石が発見されています。クラオサウルスについても砂嚢の存在が考えられていましたが、現在はエドモントサウルスのものであるか、川で丸くなった石であった可能性が高いと考えられています。

ワニ類

ワニ類のアリゲーターとクロコダイル科の両方に砂嚢があります。

魚類

ボラ科の魚類や、アロサなど一部の魚類にも砂嚢が存在します。アイルランドやスコットランドの淡水湖に生息するギラルー（ブラウントラウトの一種）の砂嚢は、主な餌である巻き貝の殻を砕くことができます。

無脊椎動物

多くの無脊椎動物も砂嚢を持ち、消化に関わっています。

人間との関わり：世界各国の砂嚢料理

家禽類の砂嚢は、世界中で食用として利用されています。ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、エミューなど、様々な鳥類の砂嚢が料理に使われます。

調理方法は様々で、焼く、煮込む、揚げるなど、地域や文化によって異なります。ハイチや東南アジアでは焼いた砂嚢が屋台で販売され、インドネシアではフライ料理の一部として、ポルトガルでは煮込み料理として、米国中西部ではピクルスとして食べられています。ハンガリーではパプリカと共に煮られ、ナイジェリアではシチューや揚げプランテーンと共に、米国南部ではスパイシーなソースや蜂蜜マスタードで、ニューオーリンズではガンボの一部として、シカゴではバター焼きとして楽しまれています。ヨーロッパではマッシュポテトとの組み合わせが多く、フランスのペリゴールサラダにも使われています。かつて米国ミシガン州では砂嚢早食いコンテストが行われていましたが、現在は中止されています。

パキスタンでは「サングダナ」と呼ばれ、カレーにされます。ユダヤ教のカーシェール料理では、内膜を取り除いてから調理されます。ネパールでは、肝臓やスパイスと揚げたカーチマーチという副菜として、インドではジブジャブという飲料として利用されます。ウガンダ、カメルーン、ナイジェリアでは、最も年長者や尊敬される人に提供する習慣があります。西洋料理ではジブレッツの一部としてスープや保存食として用いられ、台湾では醤油やタマネギと共に、中国では様々な料理に使われます。日本では「砂肝」や「ズリ」と呼ばれ、焼き鳥や唐揚げとして人気があります。

用語の用法

英語のgizzardは、俗語的に腸や臓物全般を指すこともあります。日本語の「砂嚢」にはそのような用法はありませんが、「砂肝」は「肝」の字が含まれるため、誤用されることがあります。

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