神崎川 (大阪府・兵庫県)

神崎川：歴史と自然が織りなす淀川水系の流れ

神崎川は、大阪府北部から兵庫県東南部を流れ、大阪湾へと注ぐ淀川水系の一級河川です。下流部はかつて三国川と呼ばれていました。その名の由来は、古くから栄えた「神崎の渡し」にあり、中世末期から江戸時代初期にかけて現在の名称が定着したと考えられています。

地理：淀川から分岐し、大阪湾へ

神崎川は、淀川右岸から分岐し、安威川、猪名川と合流しながら西進します。大阪市西淀川区では、左門殿川、中島川、西島川に分かれて大阪湾へと注ぎ込みます。古くから、農業用水や水運に利用され、人々の生活と深く関わってきました。興味深いことに、猪名川との合流点から河口までは大阪府と兵庫県の境界となっているものの、兵庫県側にある中洲（西淀川区佃）は大阪府に属しているため、この区間における府県境は左門殿川となります。

歴史：古代からの港湾都市、そして近世の繁栄

神崎川の歴史は古く、天平年間には行基によって河口に河尻泊が築かれ、摂播五泊の一つに数えられました。785年（延暦4年）には、和気清麻呂により長岡京遷都に伴い、淀川と直結させる工事が行われました。この工事以前は、神崎川は淀川水系とは別の水系でした。

難波津が機能を失う中で、河尻泊は大阪湾と京を結ぶ重要な港として発展し、神崎川中流の吹田や淀川との分岐点である江口も港として栄えました。平安時代には貴族や寺社の荘園が開発され、神崎の港は物資の積み替えや、京から西日本各地へ向かう人々で賑わいました。また、神崎と江口は遊女の集う歓楽地としても知られ、互いに競い合っていました。平安時代末期には、下流に大物と尼崎の港が形成されました。

鎌倉時代には、重源によって港の再建が行われ、巨大な寺社の材木や瀬戸内海の物資を集積する拠点として栄えました。戦国時代には、尼崎の港は自治都市としての色彩を強めました。江戸時代には尼崎城が築かれ、尼崎藩の城下町として発展しました。神崎川の水運は、大坂や堺の発展により重要性は低下しましたが、京と尼崎を結ぶ過書船などで賑わいをみせました。吹田は渡し場として、大坂と丹波を結ぶ亀岡街道の渡河点となりました。また、下流の三角州や湿地帯は新田として開発されました。

1878年（明治11年）には、淀川の分岐点から安威川の合流点までを直線的に結ぶ付け替え工事が行われ、洪水対策が図られました。この工事は、オランダ人技師の指導の下で行われました。その後も淀川の改修に伴い、神崎川も幾度か改修され、現在の形になりました。

明治以降は、尼崎港の近代化と工業化が進み、紡績工場などが建設されました。特に1928年の尼崎築港株式会社による臨海部の開発により、重化学工業地帯が形成されました。しかし、工業用水として地下水をくみ上げたことによる地盤沈下や、工業排水による汚染などの問題も発生しました。

戦後、防潮堤整備や川底の浚渫、下水道の整備などが進められ、環境改善が進みました。現在では、マガン、鯉、ブラックバス、ナマズなど多くの生き物が確認されています。しかし、過去の汚染物質による底質汚染は依然として課題であり、その改善に向けた取り組みが続けられています。

流域と支流：広範囲にわたる流域と豊かな支流

神崎川の流域は、摂津市、吹田市、豊中市、大阪市（東淀川区、淀川区、西淀川区）、尼崎市と広範囲に及びます。多くの支流があり、安威川、山田川、猪名川、箕面川、千里川など、それぞれに特徴的な水系を形成しています。流域には多数の下水処理場が設置され、水質管理が行われています。

神崎川：未来への継承

神崎川は、長きに渡り人々の生活と深く関わり、歴史を刻んできた河川です。かつての工業化による環境問題を克服し、現在では自然環境の再生に向けた取り組みが進んでいます。歴史と自然が調和した、未来へと続く神崎川の姿が期待されます。

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