神武王

神武王（しんぶおう）

神武王（生年不詳 - 839年9月4日）は、新羅の第45代国王（在位：839年）であり、姓は金、諱は祐徴（ゆうちょう）です。彼は第38代元聖王（げんせいおう）の曾孫にあたり、父は上大等（サンデドゥン）の金均貞（キム・ギュンジョン）、母は朴（パク）氏の真矯（ジンギョ）夫人、王妃は貞継（チョンゲ）夫人でした。

即位までの道のり

神武王は即位に至るまで、波乱に満ちた道のりを歩みました。

第42代興徳王（こうとくおう）の時代、828年には大阿飡（テアチャン、5等官）の位にあり、侍中（シジュン）に抜擢されました。しかし、831年に王都金城（現在の慶州市）で発生した地震により、侍中を免職されます。その後、834年に再び侍中に返り咲きましたが、835年に父の金均貞が上大等に就任すると、自ら辞任しました。この時、後任の侍中となったのが、後の閔哀王（びんあいおう）となる金明（キム・ミョン）でした。

興徳王の死後、王位継承をめぐり、上大等であった父の金均貞とその甥の金悌隆（キム・ジェリュン、後の僖康王）との間で激しい争いが勃発します。騒乱の中、金均貞が亡くなり僖康王が即位すると、金祐徴は清海鎮（チョンヘジン、現在の全羅南道莞島郡）大使の張保皐（チャン・ボゴ）を頼り落ち延びました。その後、僖康王を擁立した金明が反乱を起こし、僖康王を殺害して838年に閔哀王として即位すると、金祐徴派は同年3月から閔哀王を討つための軍事行動を開始しました。最終的に、金祐徴の将軍である金陽（キム・ヤン）が王都に迫り、839年1月23日に閔哀王を殺害しました。金祐徴は王の礼をもって閔哀王の屍を埋葬し、古礼に則って即位式を執り行い、王位を継承しました。

即位後の政策

神武王は即位後、王権の強化と地方勢力との連携に力を注ぎました。

まず、祖父、父、母を追封し、子の金慶膺（キム・ギョンウン、後の文聖王）を太子に立てました。また、閔哀王との戦いで功績の大きかった張保皐を感義軍使（カヌィグンサ）に任命し、食邑2千戸を賜るとともに、張保皐の娘を太子の嫁に迎える約束を取り付けました。王礼に基づく前王の埋葬や、古礼に則った即位の儀式などは、王位の尊厳を明確化するとともに、地方勢力との結合を図ったものと考えられています。

839年7月には、前々代の僖康王の代から送ることができなかった唐への使者を派遣し、淄青節度使（しせいせつどし）に奴婢（ぬひ）を送りました。唐の文宗（ぶんそう）は、遠方の人であることを憐れんで新羅に帰国させたと言われています。しかし、その同じ月の7月、神武王は病に倒れ、23日に死去しました。神武と諡（おくりな）され、弟兄山の西北に埋葬されたと伝えられています。その王陵は、慶州市東方洞の史跡第185号に比定されています。

神武王の治世は短期間でしたが、王位継承をめぐる混乱を収拾し、王権の安定化を図った重要な時期であったと言えるでしょう。

参考文献

『三国史記』第1巻 金富軾撰 井上秀雄訳注、平凡社〈東洋文庫372〉、1980 ISBN 4-582-80372-5
『三国遺事』一然撰 坪井九馬三・日下寛校訂＜文科大学史誌叢書＞東京、1904（国立国会図書館 近代デジタルライブラリー）
『完訳 三国遺事』一然著 金思燁訳、明石書店、1997 ISBN 4-7503-0992-3（原著『完訳 三国遺事』六興出版、1980）

外部リンク

慶州市公式サイト#文化遺産（国会指定文化財-史跡）

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