神社港

神社港（かみやしろこう）の概要

神社港は、三重県伊勢市の北部に位置する町名で、伊勢神宮（外宮）の摂社である御食神社に由来する地名です。かつては勢田川河口の港町として栄え、古い街並みが今も残っています。2020年4月30日現在、631世帯1,246人が暮らしています。

地理

伊勢市の中心市街地である山田に隣接する神社地区に位置し、勢田川左岸に広がっています。この地はかつて港町として賑わい、中心集落は17世紀後半に移転して形成されました。勢田川と馬瀬川が流れ、北と西は下野町、東は一色町、南は竹ヶ鼻町と接しています。また、勢田川水面上の南端の一点で田尻町とも接しています。

歴史

古代には「大口村」と呼ばれ、竹ヶ鼻町と共に一つの村を形成していました。この頃から御食神社が存在し、交通の要衝として機能していたと考えられています。集落の起源は潮満寺の門前町であり、潮満寺は弘仁8年（817年）に創建されました。元久元年（1204年）の『神宮雑書』には「南限大口并神社」とあり、神社の地名が確認できます。天正元年（1573年）には、神社に有力者がいた記録が残っています。

江戸時代には伊勢国度会郡神社村として伊勢神宮領に属し、山田三方の支配下に置かれていました。近隣の馬瀬村・竹ヶ鼻村と共に1郷とされ、年寄衆が村政を担っていました。17世紀後半には港湾が形成され、伊勢神宮鳥居前町の外港として繁栄しました。特に18世紀前半には最盛期を迎え、海運業、造船業、問屋が発達しました。建造された団平船・平田舟は、その技術と価格の安さで広く知られていました。また、伊勢神宮への参拝客も多く訪れ、船宿や遊郭が建ち並び、大湊と並ぶ神都の2大商港として栄えました。

明治元年（1868年）には神社港に改称され、これは開国後の神奈川港や兵庫港に憧れた住民の申し出によるものでした。明治時代には神社学校が開校し、多くの船が往来しました。共同汽船会社が名古屋港・豊橋港との航路を開設し、多くの参拝客が利用しました。1889年に神社港を中心として神社町が発足し、その大字となり、1944年に宇治山田市の町名となりました。1911年には電灯が灯りました。しかし、陸上交通の発達に伴い、港町としての機能は衰退していきました。現在では、少子高齢化が進んでいますが、地元有志による地域活性化が進められています。2003年にはNPO法人が設立され、まちづくり活動を展開しています。

沿革

1889年（明治22年）4月1日：町村制施行により、度会郡神社町大字神社港となる。
1941年（昭和16年）5月5日：神社町が宇治山田市に編入され、宇治山田市大字神社港となる。
1944年（昭和18年）4月1日：大字から町名に変更となり、宇治山田市神社港となる。
1955年（昭和30年）1月1日：市名改称により、伊勢市神社港となる。

まちづくり

神社港のまちづくりは、1992年の郷土史講座から始まりました。その後、地元有志による勉強会や視察を経て、1998年には途絶えていた干鯛の奉納船の入港が70年ぶりに再開され、市民行事として定着しました。2002年には「神社みなとまち再生グループ」が組織され、翌年にNPO法人格を取得しました。和船「みずき」の運航や海の駅の運営、朝市や寄席の開催、シーカヤックマラソン大会の企画運営などを行っています。また、中部国際空港への航路開設を目指す活動も行っていました。

和船「みずき」の運航

港町の再生と船参宮の復活を目的として、和船「みずき」が運航されています。2004年に地元の船大工によって製作され、船名はアテネオリンピック金メダリスト・野口みずきにちなんで名付けられました。2005年に運航を開始し、観光客を中心に利用されています。勢田川のシンボルとして、地域のイベントでも活用されています。

みなとまち館

みなとまち館は、神社みなとまち再生グループの事務所2階にある資料館で、2004年3月に開館しました。船大工の道具などが展示されているほか、伝馬船の乗船体験やシーカヤックの貸し出しなども行っています。

交通

陸上交通

道路：三重県道201号宇治山田港伊勢市停車場線が南部を東西に通っています。1886年に開通した「神社街道」が元になっています。
路線バス：三重交通のバスが、伊勢市駅前や一色町方面へ運行しています。

水上交通

和船「みずき」が、神社・海の駅から河崎・川の駅までを結んでいます（4月から11月の第1・3日曜日のみ運航）。

施設

伊勢市役所神社支所
伊勢市立神社小学校
伊勢市立神社幼稚園
伊勢神社郵便局
シンフォニア テクノロジー五十鈴寮
旅館柏屋
みなとまち館
伊勢市みなとデイサービスセンター

寺社

御食神社：神社港の地名の由来となった神社で、倭姫命の伝説が残る「辰の井」があります。
浄土宗清雲院：徳川家康の側室・清雲院お夏の方の願いにより建立された寺院で、「お夏寺」の通称があります。

参考文献

伊勢市『伊勢市史』伊勢市役所、昭和43年3月31日
伊勢文化舎 編『お伊勢さん125社めぐり』別冊『伊勢人』、伊勢文化舎、平成20年12月23日
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 24 三重県』角川書店、1983年6月8日
櫻井勝之進『伊勢神宮』学生社、昭和45年10月20日重版
平凡社地方資料センター 編『「三重県の地名」日本歴史地名大系24』平凡社、1983年5月20日

関連項目

大津神社 (伊勢市) - 五十鈴川河口にある大湊や神社港の守り神を祭神とする。

外部リンク

NPO法人神社みなとまち再生グループ
神社港（度会郡神社町神社港） - 三重の文化 - 三重県環境生活部文化振興課県史編さん班
太一御用船（伊勢市神社港） - 伊勢志摩きらり千選（財団法人伊勢志摩国立公園協会）
* 海の玄関神社（かみやしろ）を訪れる - ふるさと三重、再発見の旅 - 観光三重

神社港は、歴史と文化が色濃く残る魅力的な場所です。港町としての歴史、地域住民の活動、美しい風景が一体となり、訪れる人々を魅了しています。

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