立入宗継

立入宗継：朝廷と織田信長を繋いだ商人・官人

立入宗継（たてりむねつぐ、1528年～1622年）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した、稀代の商人にして官人です。近江国野洲郡立入庄（現在の滋賀県守山市）を拠点とした立入家の三代目当主として、禁裏御蔵職という要職を担いました。幼名は幸夜叉丸、号は隆佐、官位は従五位下・左京亮に上り、没後に従二位を追贈されています。

立入家は代々、皇室の御料所の年貢を預かる家系でした。室町時代以降は貨幣経済の発展に伴い、金融業も営むようになり、宗継の父である宗長もまた、その家業を継いでいました。宗継は、朝廷の禁裏御蔵職を継承し、京都御所への酒饌の献上や御物の保管、金銭の出納、年貢米の管理といった重要な役割を担いました。

宗継の出自は諸説ありますが、藤原北家秀郷流や佐々木氏の一族とする説、また立入家文書には松田氏との関連を示唆する史料も存在し、複雑な出自がうかがえます。近江立入城は文明年間（1469～1487年）に松田丹後守秀興によって築かれたと伝えられています。

宗継は数々の戦国大名と交友関係を持ち、その経験は『立入左京亮入道隆佐記』という貴重な記録として後世に伝えられています。この記録には宗継が見聞した出来事や詳細な状況が記されており、当時の社会情勢を知る上で貴重な史料となっています。

特に注目すべきは、織田信長の上洛における宗継の貢献です。宗継の姉が信長の家臣である道家尾張守と結婚していた縁もあり、義父である磯谷久次と共に、信長の上洛を画策しました。永禄7年（1564年）と永禄10年（1567年）の二度、正親町天皇の勅使として尾張国清洲城に赴き、荒廃した御料所の回復や京都御所の修繕を信長に依頼しました。

永禄11年（1568年）9月、信長はついに上洛を果たします。宗継は天皇の命を受け、粟田口で信長を出迎えました。この際、信長は宗継が調達した朝廷からの贈り物であった布で織られた着物を着用していたと伝えられています。以降、宗継は朝廷と信長の間を繋ぐ重要な役割を担い、両者の関係強化に貢献しました。

天正6年（1578年）には、10年間に及んだ石山合戦において、織田信長と石山本願寺の門主・顕如との和睦に奔走するなど、その外交手腕は高く評価されています。

宗継の墓所は京都市上京区にある浄土宗大本山清浄華院にあります。明治31年（1898年）には、朝儀復興への貢献を称えられ、従二位を追贈され、『立入宗継旌忠碑』が建立されました。現在でも、京都三大祭の一つである時代祭において、『織田公上洛列』の先頭で宗継の肖像が馬に乗った姿で登場します。

立入宗家は明治以降養子が続き、平成28年には宗家最後の女性が死去し断絶しました。しかし、家伝の文書史料は京都市歴史資料館に寄贈され、『禁裏御倉職立入家文書』として刊行されており、その貴重な記録は現在も研究者や歴史愛好家の間で活用されています。宗継が残した『立入左京亮入道隆佐記』と合わせて、激動の時代の貴重な証言として、今後も多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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