端末エミュレータ

端末エミュレータとは



端末エミュレータは、専用端末の機能をソフトウェアで再現するものです。これにより、パーソナルコンピュータ（PC）やワークステーションが、まるで専用端末のように振る舞うことができます。英語では「terminal emulator」と表記され、ターミナルエミュレータとも呼ばれます。

概要



端末エミュレータは、物理的な専用端末をエミュレートするソフトウェアで、主にDEC VT100のエミュレーションが基本とされています。キャラクタベースのビデオ端末をエミュレートするのが一般的ですが、グラフィック端末やプリンタのエミュレーションも可能です。用途としては、ホストマシンへの接続や、ローカルでの設定変更、ファイル操作、ソフトウェア開発など、多岐にわたります。ウィンドウシステムを利用することで、一つのコンピュータ上で複数の端末エミュレータを同時に起動することもできます。

エミュレートする端末



実際の端末は、画面制御、キーボード制御、プリンタ制御など、入出力処理に統一された規格がありません。そのため、端末エミュレータは接続先の環境に応じて様々な端末をエミュレートします。Unix環境では、事実上の標準であるDEC VT100やその上位機種のエミュレータが多く利用され、これらは「VT100互換」と呼ばれます。メインフレームに接続する場合は、IBM 3270、富士通、日立製作所の端末を、IBM AS/400に接続する場合はIBM 5250をエミュレートします。これらのエミュレータには、各メーカーの純正品だけでなく、サードパーティ製の製品も存在します。

多くの端末はキャラクタ表示のみを扱いますが、グラフィック表示が可能なグラフィック端末も存在します。例えば、xtermはTektronix 4014をエミュレートし、キャラクタとグラフィックの両方を扱うことができます。日本では、ヤマハのYIS(YGT-100)が知られています。コンピュータグラフィックスの初期には、多くのメインフレームで専用のグラフィック端末がオプションとして提供されていました。

TCP/IP経由の接続



TCP/IPを介した端末エミュレータの接続には、SSH、Telnet、rloginなどのプロトコルが利用されます。Telnetやrloginは、通信内容を暗号化せずに送受信するため、インターネット経由での利用はセキュリティ上のリスクが非常に高いです。そのため、近年ではSSHによる接続が一般的です。かつてはWindows用のSSHクライアントが標準では提供されていなかったため、端末エミュレータにSSHクライアントが統合されているものが多く見られましたが、現在ではWindowsにもOpenSSHが提供されています。

種類



端末エミュレータは、POSIXに準拠したものとそうでないものに分類できます。

POSIX系、UNIX系マシンで動作するもの


UbuntuやRaspberry Piなどの環境で利用される端末エミュレータがこれに該当します。

X Window System上で動作するもの


  • - xterm: X Window Systemで標準的な端末エミュレータで、VT102を拡張した仕様とTektronix 4014のエミュレーションが可能です。
  • - kterm: xtermの日本語対応版。
  • - rxvt: xtermを軽量化したバージョン。
  • - uxterm, QTterm, LXTerminal, Xfce Terminal, dtterm, GNOME [[端末]], GNOME Terminator, Konsole, Eterm, mltermなどがあります。

macOS上で動作するもの


  • - ターミナル（macOS標準）
  • - iTerm
  • - JTerminal.app

Windowsマシンで動作するもの



MS-DOS上で動作するもの


  • - MS-Kermit: VT102エミュレーションとカーミットプロトコルによるファイル転送機能。
  • - hterm: 日本語対応を実現。

Classic Mac OS上で動作するもの



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