第八高等学校 (旧制)

旧制第八高等学校：名門校の輝かしい歴史とその後

旧制第八高等学校（以下、八高）は、愛知県名古屋市に存在した官立の旧制高等学校です。1908年（明治41年）の設立以来、多くの優秀な人材を輩出し、その歴史は現代の名古屋大学にも深く関わっています。本稿では、八高の設立から閉校、そしてその後の校地の変遷、さらに著名な卒業生などについて、詳細に見ていきます。

設立と教育

八高は、明治41年3月、文科と理科の2学科からなる3年制の高等科を設置して発足しました。略称は「八高」で、鹿児島の第七高等学校に次いで設立されたナンバースクールとしては最後の旧制高等学校でした。その設立背景には、愛知県と名古屋市の熱心な誘致運動がありました。

生徒の半数以上は愛知県出身者でしたが、進学先は東京帝国大学が圧倒的に多く、次いで京都帝国大学と続きました。これは、名古屋帝国大学が設立されたのが1939年と遅かったこと、そして中部地方では昭和21年まで文系学部を持つ大学が愛知大学しかなかったことなどが影響していると考えられます。

校風と伝統

八高の校章は、熱田神宮の剣と数字の「8」を組み合わせたデザインでした。校歌は「銀扇空に」でしたが、最も有名なのは寮歌「伊吹おろし」です。中山久作詞、三橋要次郎作曲によるこの寮歌は、現在でも名古屋大学で歌い継がれています。他に「春三月」（大島武夫作詞、本多龍成作曲）なども代表的な寮歌として親しまれていました。

八高の校地は「瑞穂ヶ丘」または「瑞陵」と呼ばれていましたが、実際は低い丘の麓のような場所でした。現在の名古屋市立大学滝子キャンパスにあたります。正門は博物館[[明治村]]に移築され、村の正門として活用されています。また、校地内には「八高古墳」と呼ばれる小規模な前方後円墳があり、前方部はかつて食堂建設のために失われたとされています。

沿革と戦災

八高の歴史を語る上で、幾多の出来事を経てきたその沿革は欠かせません。

1908年: 設立、大学予科を設置
1930年: 反帝同盟事件が発生、多くの学生が処分を受ける
1945年: 名古屋大空襲により校舎の大部分が焼失
1949年: 新制名古屋大学に包括
1950年: 廃止

空襲による校舎焼失後は、熱田中学校や尾張中学校などの校舎を借り、地方からの生徒には河和町の寺院や学校を宿舎や教室として使用しました。その後、旧海軍の跡地を経て、1947年には瑞穂校地へ復帰、校舎が再建されました。

校地の変遷と継承

新制名古屋大学への包括後、八高の瑞穂校地は同大学の瑞穂分校として継承され、1963年には教養部が正式に発足しました。しかし、1964年にはキャンパス統合により東山キャンパスに移転、瑞穂キャンパスは廃止され名古屋市に譲渡されました。

現在、旧校地は名古屋市立大学の滝子キャンパスとなり、経済学部、人文社会学部、総合生命理学部が置かれています。構内には八高のシンボルであったソテツの木が残り、「八高生青春像」が建立されています。旧正門は博物館[[明治村]]に移築保存され、登録有形文化財となっています。また、鶴舞公園内には「八高寮歌伊吹颪の歌碑」も建立されています。

著名な卒業生

八高は、政官界、法曹界、財界、学界など、多様な分野で活躍した著名な卒業生を数多く輩出しました。ここでは、その一部を挙げます。

政官界: 江﨑真澄（衆議院議員、防衛庁長官など）、生悦住求馬（複数の県知事）、斎藤昇（初代警察庁長官）、佐橋滋（通産事務次官）、三宅幸夫（特許庁長官）など
法曹界: 花井忠（弁護士、検事総長）、服部高顕（最高裁判所長官）など
財界: 平岩外四（経団連会長）、豊田英二（トヨタ自動車会長）、盛田昭夫（ソニー会長）など
* 学界: 丹羽保次郎（東京電機大学初代学長）、久松潜一（国文学者）、横田喜三郎（国際法学者）、梅原猛（哲学者）など

これらの卒業生は、それぞれの分野で日本の発展に大きく貢献しました。

まとめ

旧制第八高等学校は、短い歴史の中で多くの優秀な人材を育成し、日本の近代化に貢献した名門校でした。その歴史と伝統は、現在の名古屋大学や名古屋市立大学に受け継がれ、今もなお人々の記憶に刻まれています。 校舎は失われたものの、校歌や寮歌、そして移築された正門など、その存在を偲ばせるものは各地に残っており、八高の精神は今も生き続けていると言えるでしょう。

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