第36回社会人野球日本選手権大会

2009年（平成21年）の秋、11月12日から22日にかけて、社会人野球の日本一を決める「第36回社会人野球日本選手権大会」が京セラドーム大阪で開催されました。多くの注目チームやドラマが生まれたこの大会は、社会人野球史に新たな1ページを刻みました。

春先の主要な大会で立て続けに優勝し、本命視されていたパナソニックは、大会終了をもって活動を休止することが決まっていた日産自動車に、まさかの2回戦で敗退しました。その日産自動車は、チーム最後の大会で準決勝まで勝ち進む健闘を見せましたが、優勝チームとなるJR九州に惜しくも敗れ、その歴史に幕を下ろしました。

今大会では、社会人野球におけるクラブチームの活躍も目覚ましいものでした。JABA大会でのパナソニックの活躍により、日本選手権への出場枠が拡大された近畿地区からは、大和高田クラブとOBC高島という2つのクラブチームが出場。これにクラブ選手権王者のトータル阪神を加えた計3チームが本戦に臨みました。中でも大和高田クラブは躍進し、クラブチームとしては大会史上最高位となるベスト8進出を達成。チームからは3名の選手が大会優秀選手に選ばれるなど、その実力を証明しました。

また、この年から適用要件が緩和されたタイブレーク制度が、今大会の準決勝で初めて実施されました。これにより、緊迫した試合展開における新たな局面が生まれました。

特筆すべき個人記録としては、1回戦の三菱重工神戸と鷺宮製作所の対戦で、三菱重工神戸の木林敏郎投手が大会史上初となるノーヒットノーランを達成しました。対する鷺宮製作所の岡崎淳二投手も、同じ試合で大会3度目の毎回奪三振を記録するなど、両投手の力投が光る試合となりました。

JR九州、初の日本選手権制覇

今大会で栄冠に輝いたのは、JR九州でした。強力な投手陣を軸に、失点を最小限に抑える安定した戦いぶりで決勝まで勝ち進みました。決勝の相手は、同年の都市対抗野球大会を制し、夏秋連覇を目指すHondaでした。試合は手に汗握る展開となり、延長11回にもつれ込みましたが、JR九州が4対3で勝利を収め、チームにとって日本選手権初優勝を成し遂げました。これは、1936年の都市対抗野球大会以来、実に73年ぶりの全国大会優勝という歴史的な快挙でした。

JR九州の優勝の原動力となったのは、エースの濱野雅慎投手です。濱野投手は今大会の全試合に登板し、4勝を挙げる獅子奮迅の活躍を見せ、最優秀選手（最高殊勲選手賞）に選ばれました。惜しくも準優勝となったHondaは、夏の都市対抗に続く栄冠は手にできませんでした。

大会を彩った記録と表彰選手

今大会では、数々の印象的な記録や、活躍した選手への表彰がありました。

主な大会記録

無安打無得点: 三菱重工神戸・木林敏郎投手（1回戦 vs 鷺宮製作所）
毎回奪三振: 鷺宮製作所・岡崎淳二投手（1回戦 vs 三菱重工神戸）
1試合最多三塁打: 3（タイ記録） - 1回戦 JFE西日本（3）対トータル阪神（0）戦
1試合チーム最多三塁打: 3（タイ記録） - JFE西日本（1回戦 vs トータル阪神）
1イニングチーム最多三塁打: 2（タイ記録） - JFE西日本（1回戦 vs トータル阪神）

主な表彰選手

最高殊勲選手賞: 濱野雅慎（投手：JR九州）
敢闘賞: 諏訪部貴大（投手：Honda）
打撃賞: 長野久義（外野手：Honda）
首位打者賞: 吉田承太（外野手：日産自動車） 13打数5安打打率.385
特別賞: 木林敏郎（投手：三菱重工神戸）

大会優秀選手

投手: 濱野雅慎（JR九州）、米藤太一（JR九州）、諏訪部貴大（Honda）、武藤祐太（Honda）、秋葉知一（日産自動車）、亀川裕之（三菱重工横浜）、米倉大介（大和高田クラブ）、幸松司（九州三菱自動車）、岩見優輝（大阪ガス）
捕手: 中野滋樹（JR九州）、佐伯亮（Honda）、小野和隆（大阪ガス）
一塁手: 西郷泰之（Honda）、小山豪（日産自動車）、田城智博（三菱重工横浜）
二塁手: 北山恵丞（日産自動車）、坂上真世（三菱重工横浜）、小松良平（九州三菱自動車）
三塁手: 只熊祐貴（JR九州）、藤田利樹（大和高田クラブ）
遊撃手: 川戸洋平（Honda）
外野手: 小手川喜常（Honda）、長野久義（Honda）、吉田承太（日産自動車）、佐伯裕次郎（大和高田クラブ）、榎篤久（日本通運）、小甲和俊（日本通運）、山地大輔（大阪ガス）
指名打者: 渡部英紀（三菱重工横浜）

元気賞

* 大和高田クラブ応援団

休部チームの最後の奮闘、クラブチームの歴史的な躍進、そしてJR九州の73年ぶりの全国制覇など、多くの物語が紡がれた第36回社会人野球日本選手権大会は、関係者やファンにとって忘れられない大会となりました。

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