紀飯麻呂

紀飯麻呂（きのいいまろ）

紀飯麻呂は奈良時代に活躍した公卿で、様々な官職を歴任した人物です。彼の家系は、御史大夫の紀大人の孫であり、式部大輔の紀古麻呂の長男として誕生しました。官位としては従三位・参議を持ち、勲位は勲十二等に位置づけられます。

経歴の概要

飯麻呂の公職生活は、聖武天皇治世の神亀6年（729年）に始まります。同年の長屋王の変が終結した後、彼は3月に外従五位下に叙せられました。この時期には、長屋王倒閣に成功した藤原武智麻呂や石川石足、多治比県守、藤原麻呂たちと同様に、反長屋王派として昇進を果たしたことが窺えます。

その後、飯麻呂は同年8月に内位の従五位下に、さらに天平5年（733年）には従五位上に昇進します。これにより、彼の出世街道は順調に進展しているものの、早くも天平12年（740年）に発生した藤原広嗣の乱において、持節大将軍・大野東人の下で征討副将軍を務めることとなります。

翌年の741年、藤原広嗣追討の功により、一度に従四位下に昇格し、右大弁の任命を受けます。天平14年（742年）には大宰府が廃止され、飯麻呂は現地に派遣されることになり、実務の処理を行ったことが記録されています。

また同年2月には新羅の使者・金欽英による大宰府訪問時には、恭仁宮の宮室未完成のため、飯麻呂が現地で饗応し帰国を手配する役目も担いました。つづく天平15年（743年）では、聖武天皇の都合による紫香楽宮への行幸を支援し、留守司としての役割も果たしています。

天平16年（744年）からは畿内巡察使を務め、天平17年（745年）には平城京への還都に向けて平城宮の清掃を指示されました。この期間には、寺院からの人々が集まり、混乱が生じたというエピソードも残されています。飯麻呂は当時、橘諸兄派に属していると考えられていましたが、天平18年（746年）には右大弁から常陸守に転任し、天平21年（749年）には大倭守へと昇進します。

その後、天平勝宝5年（753年）に大宰大弐を経て、754年には大蔵卿、右京大夫に任命され、再び京に戻ることとなります。天平勝宝9歳（757年）に橘諸兄が亡くなると、飯麻呂は葬儀の監護を行う一方で、藤原仲麻呂派に転じる様子が見られます。

仲麻呂政権において、飯麻呂は様々な要職を兼任し、美作守としての地位にあった天平宝字5年（761年）には、権力乱用の告発を行い、辞官を申し出ることとなります。さらに、彼の最高位は天平宝字6年（762年）1月に従三位となり、同年7月19日に逝去しました。最終的には散位従三位として世を去ります。

官歴

飯麻呂の官歴は次のようになります—

• - 正六位上：時期不詳
• - 外従五位下：神亀6年（729年）3月
• - 従五位下：同年8月
• - 従五位上：天平5年（733年）3月
• - 征討副将軍：天平12年（740年）9月
• - 従四位下（越階）、右大弁：天平13年（741年）
• - 畿内巡察使：天平16年（744年）
• - 常陸守：天平18年（746年）
• - 大倭守：天平21年（749年）
• - 従四位上：同年7月
• - 大宰大弐：天平勝宝5年（753年）
• - 大蔵卿、右京大夫：天平勝宝6年（754年）
• - 参議、正四位下：天平勝宝9歳（757年）
• - 正四位上：天平宝字3年（759年）
• - 従三位：天平宝字6年（762年）
• - 薨去：同年7月19日

このように、紀飯麻呂は政治の多くの局面で重要な役割を果たし、彼の歴史的な影響は今もなお評価されています。

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