細川勝久

細川勝久とは

細川勝久は、室町時代後期から戦国時代にかけての武将であり、備中国の守護大名です。細川氏は、足利氏の勢力拡大とともに、本拠地の三河国から畿内や四国へと勢力を広げ、備中国にもその影響力を及ぼしました。勝久は、備中守護家として、室町幕府や京兆家（細川宗家）との関係の中で、領国統治に苦闘しました。

備中守護家の成立

細川氏が備中国に進出した当初は、京兆家の影響力が強かったものの、後に細川満之を祖とする一族が備中守護に任じられ、備中守護家が成立しました。勝久は満之の曾孫にあたります。備中守護家は、三河国にも所領を持っており、宝飯郡市田付近に拠点を構えていました。しかし、備中守護家の支配は、当初から強固なものではなかったとされています。

室町時代の守護は、鎌倉時代の守護の職務（軍事・警察的な性格）に加え、幕府から国内の荘園や公領に対する統治権や経済的支配権を与えられていました。例えば、刈田狼藉の検断権、使節遵行権、半済給付権、闕所地給付権、段銭・棟別銭徴収権などです。これらの権限を背景に、守護は守護使を派遣し、徴税や兵糧の調達を行いました。しかし、備中においては、京兆家の影響力が依然として強く、守護家は十分な権限を行使できなかったようです。

勝久の生涯

勝久は、細川氏久の子として生まれました。「勝」の字は、7代将軍足利義勝から偏諱を受けたものと考えられています。元服後は、足利義政に仕え、御供衆や御相伴衆を務めました。兄弟の細川政信も義政に仕えています。

応仁の乱では、勝久は京兆家当主の細川勝元の指揮下で、東軍の有力武将として戦いました。しかし、応仁の乱終結後、勝久は勝元の子である細川政元と対立するようになり、備中を巡る戦乱に巻き込まれていくことになります。

応仁の乱での活躍

応仁元年（1467年）5月26日、京での戦闘が始まりました。勝久は、東軍の一員として、山名宗全率いる西軍と戦いました。勝久邸も西軍の攻撃を受け、炎上しています。その後、東軍は優勢に戦いを進めますが、西軍の巻き返しにより、戦況は一進一退となります。この戦乱により、京の都は荒廃しました。

備中大合戦

応仁の乱を機に、備中では寺社領や公家領を巡る土着武士の争奪戦が激化していました。また、守護の収奪に対する反発も高まっていました。勝久は、京兆家の管領である細川政元と対立し、延徳3年（1491年）には、政元の命を受けた庄元資との間で、大規模な合戦（備中大合戦）が勃発しました。庄元資は、讃岐の香西氏や備前の松田元藤と連携し、勝久側の軍勢を打ち破り、多くの犠牲者が出ました。

翌明応元年（1492年）に勝久は自ら軍勢を率いて備中に入国し、庄元資を破って一時的に国外に追放しました。しかし、元資は安芸国や石見国の国人の協力を得て再び備中に侵攻し、勝久と和睦しました。この結果、守護の権威は大きく失墜し、有力な国人勢力が台頭するようになりました。

勝久は明応2年（1493年）に歌を詠んでおり、その後活動記録が途絶えているため、この頃に死去したと推測されています。

勝久の死後

勝久の後継には、阿波守護家から細川成之の次男である之勝（義春）を迎えましたが、後に之勝は阿波守護家に戻り、備中守護家は空席となりました。その後、細川政清や庄氏との間で対立が激化し、備中大合戦が再燃します。最終的に、庄氏が推す細川之持（義春の子）が備中守護となりました。

永正の錯乱の後、細川高国が京兆家の家督を握ると、高国は従兄弟の細川国豊を備中守護に任じ、之持の排除を図ります。その後、高国の実父である細川政春が備中守護となりました。しかし、戦国時代になると、備中の実権は、守護代の庄氏や石川氏、三村氏などの国人勢力が握り、守護の力は形骸化しました。

備中を制したのは毛利氏であり、細川氏は、戦国大名として備中を統治することはありませんでした。

まとめ

細川勝久は、室町時代後期から戦国時代にかけての武将であり、備中守護として、激動の時代を生き抜きました。応仁の乱での活躍や、備中大合戦などの戦乱を通して、その生涯は歴史の中に刻まれています。しかし、守護としての権威を十分に発揮することはできず、戦国時代への移行期には、その勢力を失ってしまいました。

参考文献

植木成行『中世備中の歴史』
古野貢『中世後期細川氏の権力構造』吉川弘文館、2008年。