羅綺

羅綺（ら き）は、明代に活躍した官僚であり、その生涯は波乱に満ちていました。彼の出自は磁州滏陽県にあり、生年は不明ですが、1458年にこの世を去りました。

1430年、羅綺は進士の試験に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。1435年に英宗が即位すると、彼は監察御史に任命され、直隸や福建の巡按としてその才能を発揮しました。羅綺は公正で有能な官吏として知られていました。

1444年、羅綺は参賛寧夏軍務を担当することになりました。翌年には交代の時期を迎えましたが、寧夏の軍民は彼の留任を強く求め、陳鎰に嘆願しました。この訴えが朝廷に届き、羅綺は再び参賛寧夏軍務に任命されました。その後、軍務を担当したまま大理寺右丞に抜擢されました。この時期、羅綺は宦官である王振の側近、任信と陳斌を弾劾しました。しかし、1446年に任信と陳斌は、羅綺の不正を告発し、総兵官の黄真に再調査が命じられました。黄真は羅綺が宦官を「老奴」と罵っていたことを報告し、王振を激怒させました。これにより、羅綺は北京に召還され、罪を償うために金銭を要求されましたが、王振はこれを認めず、錦衣衛に再審を命じました。その結果、羅綺は一兵士として遼東に流されるという厳しい処分を受けました。

1449年、景泰帝が即位すると、羅綺は冤罪を訴えましたが、すぐには受け入れられませんでした。しかし、1450年、兵部尚書の于謙と戸部尚書の金濂の推薦により、羅綺は北京に呼び戻され、大理寺右丞に復帰しました。その後、大理寺右少卿に昇進し、礼部侍郎の李実の副使としてオイラトに派遣され、英宗の身柄返還交渉という重要な任務を担いました。交渉後、羅綺は刑部左侍郎に抜擢され、その有能さを示しました。

1451年、羅綺は雲南・四川に派遣され、軍需物資の輸送を監督しました。その後、寇深に代わって松潘に駐屯し、地方の安定に尽力しました。1452年には、雪児卜寨の首領である卓労が率いる反乱軍を鎮圧し、卓労と阿児結を捕らえ処刑しました。また、この地域では土司同士の争いが絶えなかったため、羅綺は1456年に王永の拠点を襲撃し、彼を討ち取りました。さらに黒虎諸塞のチベット系民族を撃破し、350人を斬首するという大きな戦果を上げました。

1457年、羅綺は北京に召還され、左副都御史に任じられ、その功績によって二品の禄を賜りました。しかし、御史の張鵬と楊瑄が石亨を弾劾した際、石亨は羅綺と耿九疇がこの弾劾を唆したと主張しました。この結果、羅綺は再び投獄され、広東参政に降格されることになりました。彼はこの処分に納得せず、赴任を拒否しました。

1458年、羅綺は英宗の宦官重用を非難し、王振の形を模した香木を埋葬し、「朝廷の失政により我々は降格された」と発言したという告発がなされました。これにより、羅綺は逮捕され、死刑に処されました。彼の財産は没収され、家族の男性は辺境に送られ、女性は浣衣局に入れられるという過酷な処分を受けました。しかし、成化帝が即位すると、赦免令により民とされ、財産も返還されました。

羅綺の生涯は、明代の官僚制度の矛盾と、政争の激しさを象徴するものでした。彼はその能力と正義感で数々の功績を上げましたが、最終的には政治的な陰謀によって悲劇的な最期を遂げました。

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