翟釗

翟釗（てき しょう）：翟魏の二代目天王、その生涯

翟釗（生年不詳 - 393年）は、五胡十六国時代に存在した翟魏の二代目天王であり、初代天王・翟遼の子として生まれました。彼は激動の時代を生き抜き、後燕や東晋といった強国と戦いましたが、最終的には国を失い、亡命先で悲劇的な最期を遂げました。

翟魏の継承者として

翟釗の父、翟遼は、もともと後燕から独立した丁零族の勢力を率いていた翟斌の後継者として翟魏を建国しました。翟釗は、その父の跡を継ぎ、翟魏の勢力を拡大しようと試みます。

即位前の活動

即位前の翟釗は、父の命を受け、387年1月に陳・潁を略奪するために出陣しますが、東晋の豫州刺史・朱序が派遣した秦膺によって撃退されます。また、390年8月には、東晋の将軍・劉牢之に鄄城で敗れ、河北へと逃走を余儀なくされます。

天王即位、そして滅亡へ

391年10月、父・翟遼の死を受けて翟釗は天王の位を継承し、元号を定鼎と改めます。彼は即位後、後燕の都である鄴城を攻めますが、遼西王・慕容農によって撃退されます。392年2月、後燕の皇帝・慕容垂が自ら軍を率いて魯口から河間、渤海、平原へと進軍すると、翟釗は将軍の翟都を館陶に侵攻させ、蘇康塁に駐屯させます。

同年3月、慕容垂は南下して翟釗を攻撃します。4月、翟都は滑台へ逃走しますが、慕容垂によって討たれます。翟釗は黎陽に退却し、6月には慕容垂が黎陽津に到達して渡河を試みますが、翟釗は南岸に兵を並べてこれを阻止しようとします。しかし、慕容垂は偽の兵を用いて翟釗の注意をそらし、その隙に渡河を成功させます。これを見た翟釗は、妻子とわずかな手勢を率いて北の白鹿山へと逃走します。慕容農は追撃して翟釗の軍勢を捕らえますが、翟釗自身は単身で西燕の長子へと亡命します。これにより、翟魏は滅亡しました。

亡命、そして暗殺

西燕に亡命した翟釗ですが、その1年後、西燕の皇帝・慕容永を暗殺しようと企てたことが露見し、慕容永によって誅殺されました。かつて天王として君臨した翟釗は、亡命先で失意のうちにその生涯を終えたのです。

翟釗の生涯は、五胡十六国時代の混乱と権力闘争を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。彼の短い統治期間は、翟魏の滅亡という結果に終わり、歴史にその名を刻みました。

参考資料

『魏書』列伝第83
『晋書』載記第23
* 『資治通鑑』巻第107、巻第108

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