肥田氏

肥田氏（ひだし）

肥田氏は、「肥田」を氏の名とする日本の氏族です。「ひだ」という読みは、斐陀、斐太、斐陁、飛騨、飛駄、肥田、比多、比田、日田など、様々な表記が見られます。

概要

著名な肥田氏としては、土岐氏の庶流があります。代々武家として鎌倉幕府、室町幕府を支え、その後は織田信長、明智光秀、豊臣秀吉、北条氏康、徳川家康といった時代の権力者に仕えました。江戸時代には旗本幕閣（長崎奉行、勘定奉行）として徳川幕府中枢を支えると共に、尾張藩、水戸藩、高松藩の家老を輩出しました。幕末には遣米使節の一員として咸臨丸で渡米するなど、明治時代にかけても活躍し、新政府の下で文明開化に貢献しました。

異流も多く、美濃国土岐郡肥田を発祥とするものを含めて、大きく斐陀国造肥田宿禰、播州肥田氏、美濃肥田氏、豆州肥田氏、遠江肥田氏、比多国造比多氏などがあります。また、飛騨氏、飛田氏、比田氏、樋田氏、氷田氏、疋田氏、貴田氏も同族の可能性があります。

家紋は「土岐桔梗」「桔梗」「丸に桔梗」「片喰」「三つ柏」「丸に剣花菱」「丸に太九枚笹」「三つ盛酢漿草」などがあります。

2008年（平成20年）現在、日本に1849世帯の肥田姓があり、岐阜県、中京圏、関西圏に多いものの、広く日本全国に分布しています。首都圏を除き、主な地域としては常滑市に87世帯(4%)、可児市48世帯(2%)、土岐市45世帯(2%)、賀茂郡42世帯(2%)、射水郡31世帯（1%)、加東市・西脇市12世帯などが挙げられます。

各地の肥田氏

斐陀国造肥田氏

『類聚符宣抄』には康保五年、天禄四年、永祚二年に肥田宿禰維延が見え、『朝野群載』巻十六に「左少史肥田宿禰」と見える人物と同一人物と見られています。この肥田宿禰姓の一族は、古代飛騨国の豪族であった斐陀国造の後裔とする説があります。

美濃肥田氏

現在の岐阜県土岐市肥田町を発祥の地としていますが、歴史の流れと共に居を変え、可児肥田氏、尾張肥田氏、伊勢肥田氏、中津川肥田氏、近江肥田氏、江戸肥田氏が確認されています。家紋は「土岐桔梗」「丸に桔梗」です。菩提寺は臨済宗妙心寺派天福寺（現在の肥田町）です。

美濃肥田氏は、土岐氏の流れを汲み、足利将軍家奉公衆を務める名族でしたが、応仁の乱前後から衰退し、斎藤義龍の挙兵により四散しました。その後、織田信長や明智光秀に仕え、徳川家康に仕える者もいました。

尾張肥田氏

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕え、尾張大納言義直に付属しました。孫左衛門家は、尾張徳川家の城代家老を拝命しています。菩提寺は政秀寺（名古屋市中区）です。

江戸肥田氏

武蔵国埼玉郡（榛沢、比企郡）、上総国を知行し、徳川幕府の旗本あるいは幕閣として江戸に居住しました。家紋は「丸に桔梗」です。菩提寺は牛込蒼龍山松源寺（現、下落合松源寺）です。

豆州肥田氏

発祥は伊豆国田方郡肥田村（現在の静岡県函南町肥田）ですが、戦乱を避け伊豆国賀茂郡八幡野村へ移住しました。土岐氏系説では、土岐肥田頼衡が観応3年（1352年）に伊豆守に任ぜられ、次男肥田二郎を守護代として肥田村に定住させたという説があります。また、伊豆の古代豪族である伊豆国造の系統、値氏子孫・肥田宿禰の子孫説があります。平安期に発祥地に居住し肥田氏を称し、在庁官人となりました。その他、藤原時代を築いた秦氏の「はた」が「ひだ」に転化したとの説もあります。北条氏直に仕え、一旦帰農した後に徳川家康に仕え、水戸徳川家の家老、高松藩家老を勤めました。幕末明治期に活躍した人物もいます。

著名な人物

肥田次郎光房 - 土岐浅野の地で肥田を名乗り、肥田氏の祖となりました（1220年（承久2年））。
肥田孫左衛門忠重 - 徳川家康より尾張藩徳川義直の家老を命じられ、以後、代々孫左衛門を名乗り尾張徳川家の家老職を輩出しました。
肥田浜五郎 - 咸臨丸で訪米した人物で、日本の造船の父といわれています。岩倉使節団理事官も務めました。
肥田舜太郎 - 医学博士、軍医として広島勤務中に原爆被爆し、被爆者の救済に尽力しました。日本被団協原爆被爆者中央相談所理事長としても活躍しました。

その他の肥田氏

播州肥田氏、遠江肥田氏、中津川肥田氏、伊勢肥田氏、近江肥田氏など、各地に様々な肥田氏が存在します。それぞれに歴史や特色があり、日本の歴史を彩ってきました。

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