胡広 (明)

胡広（こ こう）

胡広（1370年 - 1418年）は、明代初期に活躍した学者であり官僚です。字は光大といい、吉州吉水県を本貫とします。

生涯

胡広は、胡寿昌の次男として生まれました。1400年、科挙の廷試で、靖難の変に関する設問に対し、「皇族の藩王たちが連携すると、人心が動揺する」と回答し、建文帝から状元に選ばれました。同時に、靖の名を賜り、翰林修撰に任じられました。

永楽帝が即位すると、胡靖（この時点では靖という名前であった）は解縉とともに永楽帝に帰順しました。その後、侍講、侍読、右春坊右庶子と昇進し、名前を広に戻しました。1407年には翰林学士に進み、左春坊大学士を兼任しました。

1409年、永楽帝が北征に出ると、胡広は楊栄や金幼孜らとともに従軍しました。皇帝の諮問に夜遅くまで応え、その学識と実務能力を高く評価されました。ある時、道に迷いながらも川を渡った際には、その労苦を永楽帝にねぎらわれたという逸話が残っています。

胡広は書にも優れており、石碑に刻む文言の執筆をしばしば命じられました。1411年には、『明太祖実録』の再編修に携わり、また永楽帝の勅命により、『周易伝義大全』、『書伝大全』、『詩集伝大全』、『礼記大全』、『春秋集伝大全』、『四書大全』といった重要な書籍の編纂を主導しました。これらの編纂事業は、明代の学術の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

1414年、胡広は再び北征に従い、皇長孫の朱瞻基に経書や史書を講義しました。1416年には、文淵閣大学士に昇進しました。永楽帝がチベットの僧を招いて法会を催した際には、不思議な出来事を目の当たりにし、「聖孝瑞応頌」を献上しました。この頌は後に仏教音楽に編曲され、宮中で歌い舞われたと伝えられています。

礼部郎中の周訥が封禅の挙行を提案した際には、胡広はこれに反対し、「却封禅頌」を献上しました。その見識の高さから、永楽帝は胡広をますます信頼するようになりました。

胡広は、その性格が非常に慎み深く、皇帝の前や職務上で他人を告発することがありませんでした。母の死去により喪に服し、喪が明けて帰朝すると、永楽帝から民衆の生活状況について尋ねられました。胡広は、「民は安定しておりますが、州県が建文帝時代の奸党を厳しく追及しているため、無関係の親族まで罪に問われ、民衆が苦しんでいます」と答えました。永楽帝は、この意見を聞き入れ、民衆の苦しみを軽減しました。

1418年、胡広は49歳で亡くなりました。その功績を称え、礼部尚書の位が追贈され、諡号は文穆と贈られました。翌年には、息子の胡穜が翰林検討に任じられ、洪熙帝の時代には、胡広に少師の位が追贈されました。

胡広は、その学識の高さと優れた実務能力により、明代初期の政治・文化に多大な貢献をした人物として、後世に名を残しています。彼の編纂した書籍は、明代の学術研究の基礎となり、その影響は非常に大きいと言えるでしょう。

脚注

参考文献
* 『明史』巻147 列伝第35

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