胡質

胡質 (こ しつ)

胡質は、中国三国時代の魏に仕えた武将、政治家。字は文徳。揚州楚国寿春県（現在の安徽省淮南市寿県）の人。

生涯

若くして蔣済・朱績と並び、揚州の名士として知られていた。曹操にその才能を認められ、招聘を受けて政治に関わるようになる。頓丘県令などを経て、中央でもその能力を発揮した。

張遼との逸話も残されている。張遼が護軍の武周と仲違いした際、胡質の評判を聞きつけ、部下に迎えたいと申し出た。しかし、胡質は病気を理由にこれを拒否。その理由を問われた際、「武周は正しい人物であり、以前は将軍も彼を尊敬していたはず。些細なことで仲違いすべきではない」と諫めた。この言葉に感銘を受けた張遼は、武周と和解したという。

太和2年（228年）の石亭の戦いでは、賈逵の指揮下で従軍。呉の周魴の偽降に欺かれた曹休を救出する。

青龍4年（236年）には、荊州刺史・振威将軍・関内侯に任じられる。息子である胡威が赴任先を訪れた際、胡質の部下が密かに胡威の世話をした。胡威がお礼として絹を渡すと、胡質は激怒し、その部下を罷免した。このエピソードは、胡質の厳格な人となりを示すものとして知られている。

景初元年（237年）には、呉の朱然が江夏郡を包囲した際、これを撃退。正始2年（241年）の芍陂の役では、朱然が樊城を包囲した際、周囲の反対を押し切って軽装の軍を率いて救援に駆けつけ、城内を安定させた。

正始6年（245年）には、征東将軍・仮節・都督青徐州諸軍事に昇進。農業と防備の充実に尽力した。その性格は沈着篤実で、他人の生き方に干渉しなかったため、各地で民衆から慕われた。

嘉平2年（250年）に死去。軍功による褒美は常に部下に分け与えていたため、家には財産が残っていなかったという。その功績を称えられ、楊陵亭侯の爵位と領地100戸が追贈された。諡は貞侯。

嘉平6年（254年）には、同じく清廉な人物として知られていた徐邈・田豫らと共に顕彰され、銭と穀物が贈られた。

西晋の時代、司馬炎（武帝）から「卿と父はどちらが清廉か？」と尋ねられた胡威は、「父は清廉さを人に知られることを恐れ、私は清廉さを人に知られないことを恐れています。とても父には及びません」と答えた。この言葉は、胡威自身もまた、父と同様に清廉な人物であることを示している。

胡威はその後、西晋において前将軍・監青州諸軍事・青州刺史にまで昇進した。

三国志演義

小説『三国志演義』では、石亭の戦いで曹休を援護する場面のみが描かれている。

胡質の生涯は、陳寿の『三国志』魏書に詳しい。

人物

清廉潔白: 自身だけでなく、息子である胡威も清廉な人物として知られている。私欲を捨て、公務に尽力する姿勢は、多くの人々に感銘を与えた。
沈着篤実: 性格は落ち着いており、物事を冷静に判断する能力に長けていた。また、誠実で真面目な人柄は、周囲からの信頼を集めた。
* 民を思う心: 赴任地では常に民衆の生活を第一に考え、農業の振興や防備の強化に尽力した。その姿勢は、各地で民衆から慕われる理由となった。

胡質の生き方は、現代においても学ぶべき点が多い。私欲を捨て、公のために尽くすことの大切さ、誠実で真面目な人柄がもたらす信頼の重要性など、彼の生涯は私たちに多くの教訓を与えてくれる。

もう一度検索