サンシュユ

サンシュユ（山茱萸）

サンシュユ（学名: Cornus officinalis）は、ミズキ科ミズキ属に分類される落葉性の小高木です。中国を原産とし、日本へは江戸時代に薬用植物として導入されました。春には鮮やかな黄色の花を咲かせ、秋にはグミのような赤い実をつけることから、観賞用としても人気があります。

名称

和名の「サンシュユ」は、中国での名称である「山茱萸」の音読みが由来です。また、早春に葉が出る前に木全体を覆うように黄色い花を咲かせる様子から、「ハルコガネバナ（春黄金花）」という別名もあります。これは、植物学者の牧野富太郎が提唱したものです。秋には赤い実が珊瑚のように見えることから、「アキサンゴ」とも呼ばれています。

分布

原産地は中国の浙江省や朝鮮半島の中北部で、中国や朝鮮半島に広く分布しています。日本へは江戸時代に朝鮮経由で種子が持ち込まれ、薬用として栽培が始まりました。現在では、東北地方から九州地方にかけて広く植栽されており、庭木や公園樹として親しまれています。日当たりの良い肥沃な場所を好みます。

特徴

サンシュユは、樹高が5～15メートルになる落葉広[[葉樹]]です。枝は斜め上方向に伸び、成木の幹は褐色で樹皮が剥がれた跡がまだら模様になることがあります。若木の幹や枝は赤褐色から薄茶色で、表面が荒く剥がれやすいのが特徴です。

葉は有柄で互生し、卵形から長楕円形で、長さは4～10センチ[[メートル]]程度です。葉の縁は滑らかで、裏面には毛が生えています。葉脈は5～7対あり、先端に向かって湾曲しています。葉はハナミズキやヤマボウシに似ていますが、やや細長い形状をしています。秋には紅[[葉]]しますが、葉が小さいため、派手さはないものの、深みのある美しい紅[[葉]]を見せてくれます。

花期は3～4月頃で、葉よりも先に黄色い花を咲かせます。直径2～3センチ[[メートル]]の散形花序を形成し、小さな花が多数集まって咲きます。個々の花は直径4～5ミリ[[メートル]]で、4枚の花弁が反り返り、4本の雄しべがあります。

果実は核果で、長さ1.2～2センチ[[メートル]]の長楕円形です。10月中旬から11月にかけて赤く熟し、グミの実に似ています。生食はできませんが、甘味、酸味、渋味があります。核は長さ8～12ミリ[[メートル]]で、中央に縦の稜があります。

冬芽は枝の先端に1つ付き、側芽は対生します。花芽は球形で、2枚の小さな芽鱗が基部にあります。葉芽は楕円形をしています。

栽培

サンシュユは、日当たりの良い、やや湿った場所を好みます。繁殖は実生や株分けによって行います。土壌は特に選びませんが、植栽の適期は11～3月とされています。剪定は1～3月、施肥は12～3月に行います。夏には、イラガやカナブンによる食害に注意が必要です。

利用

サンシュユは、庭園樹や公園樹として利用されるほか、切り花としても楽しまれます。早春に咲く花は、マンサクと並んで人気があり、和風庭園に合うとされています。また、果実には薬効があり、漢方薬として利用されます。

果実には、リンゴ酸、酒石酸、没食子酸などの有機酸、タンニン、糖などが含まれています。種子には、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪油が含まれています。これらの成分は、制菌作用や滋養強壮効果があるとされ、健康維持に役立つと考えられています。

生薬

秋に赤く熟した果実を採取し、熱湯に浸して種子を取り除き、乾燥させた果肉は、生薬「山茱萸（さんしゅゆ）」として利用されます。強精、止血、滋養強壮、頻尿、収斂、冷え性、低血圧、不眠症などに効果があるとされています。漢方薬の牛車腎気丸、八味地黄丸、杞菊地黄丸などにも配合されています。

民間療法では、腎臓を助ける薬草として、1日3～5グラムを煎じて服用する方法が知られています。また、果実酒やジャムとしても利用され、疲労回復や滋養強壮に効果があると言われています。

サンシュユは、その美しい花や実、薬効成分など、様々な魅力を持つ植物です。庭木として植えたり、薬用として活用したりすることで、私たちの生活を豊かにしてくれるでしょう。

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