若槻荘

若槻荘（わかつきのしょう）

若槻荘は、信濃国水内郡、現在の長野県長野市に位置していた荘園です。この地は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、源頼隆という武将が地頭として治めていました。

若槻氏の興り

源頼隆は、源義朝の身代わりとなって討ち死にした父、源義隆が相模国毛利庄を拠点としていたことから毛利氏を名乗っていました。しかし、源頼朝の死後、この地を所領として移り住み、若槻氏や押田氏、高松氏といった氏族の祖となったとされています。また、義隆の曾孫である若槻五郎頼仲は、北白川蔵人としてこの荘園を伝領しました。

若槻城の存在

現在の若槻団地の一角には、かつての里城跡の名残が残っています。また、北の三登山の中腹には山城跡があり、対の砦であったと伝えられています。蚊里田八幡宮は、この城の守護神として勧請されたとされています。若槻城（里城）は、団地造成前には本丸や二の丸跡が水田や畑の中に残っていましたが、現在では水の枯れた堀跡がわずかにその面影を残すのみです。城跡は東西126メートル、南北180メートルの規模であったと伝えられ、淺川の分流である太郎堰から水を引いていました。

歴史

鎌倉時代には、『吾妻鏡』に後白河法皇から源頼朝に示された「関東御知行国々内乃具未済庄々注文」の中にその名が見え、証菩提院領であったことが記録されています。南北朝時代になると、高梨氏の知行となり、新たに若槻新荘が開拓されました。この新荘には、伽佐（替佐）、志妻（静間）、蓮などの諸郷が含まれていました。

室町時代の応永10年（1403年）には、細川兵庫助慈忠が幕府代官として善光寺横山城に入り、信濃国の混乱に対する幕府の直接統治に乗り出しました。しかし、村上満信や大井光矩、井上光頼、小笠原為経らをはじめとする在地武士たちが代官の命令に従わず、連合して守護所を攻めようとしました。そのため、市川氏貞らが出撃し、段の原（長野市篠ノ井段の原、または長野市壇田原とする説もある）で合戦が行われました。幕府軍は村上氏らを破り、追撃して生仁城や塩崎城を落城させました。

翌年には、代官の所領実態調査に対して、高梨左馬助が強く抵抗しました。このため、幕府軍は高梨氏の拠点である桐原館（長野市桐原）や若槻城（長野市若槻）に出撃し、たちまち攻略しました。その後も、下芋河、替佐、蓮、東条など、高梨氏の支配地域への転戦が続きました。この戦いによって、幕府の信濃支配が安定したとされています。若槻城は、この時の戦いで落城しました。応永28年（1421年）の将軍足利義持御教書では、禅林寺若王子領となっています。

戦国時代には、高梨氏と村上氏の間で小競り合いが頻繁に行われました。高梨氏に隷属していた城主は、村上氏を撃破した武田信玄に追われ、越後に逃れました。第3次川中島の戦い（上野原の戦い）では、髻山城の上杉方と若槻城の武田方との間で戦われたと伝えられています。

参考文献

『日本歴史地名大系 20 長野県の地名』（平凡社、1979年）
『角川日本地名大辞典 20 長野県』（角川書店、1990年）

関連項目

* 蚊里田八幡宮 - 若槻荘の総鎮守。

もう一度検索