苻法

苻法（ふ ほう）

苻法（生年不詳 - 357年）は、五胡十六国時代の前秦の皇族であり、初代皇帝・苻健の甥、第3代皇帝・苻堅にとっては庶長兄にあたる人物です。字は永則、幼名は阿法。献哀王と諡されています。

生涯

苻法は苻雄の庶長子として生まれました。苻健の時代には後将軍に任じられ、清河王に封じられます。352年、将軍の劉珍と夏侯顕が反乱を起こすと、苻法は苻飛と共に鎮圧に当たり、これを討伐しました。

苻健の死後、子の苻生が即位しますが、苻生は暴君であり、側近や女官を殺戮するなど、その振る舞いは目に余るものでした。357年6月、苻生が「苻法の兄弟は信用できない」と発言したことが密告されると、苻法はついに政変を決意します。

特進梁平老、光禄大夫強汪らと共に雲龍門から宮殿に突入し、弟の苻堅もこれに呼応しました。苻生の兵は戦意を喪失し、苻生は捕らえられて越王に降格された後、殺害されました。

政変後、苻堅は苻法に帝位を譲ろうとしますが、苻法は自身が庶子であることを理由に固辞し、苻堅こそが帝位にふさわしいと主張します。苻堅もまた兄である苻法を推しますが、最終的には苻堅の生母である苟氏が群臣に働きかけ、苻堅が即位することになりました。苻堅は皇帝号を名乗らず、大秦天王を称し、苻法は使持節・侍中・都督中外諸軍事・丞相・録尚書事に任じられ、東海公に封じられました。

苻法は苻堅よりも年長で賢明であったため、人望を集めましたが、苟氏は苻法が苻堅の地位を脅かすのではないかと危惧していました。同年11月、苟氏は苻法の邸宅前で多くの車馬を目撃し、苻法が謀反を企んでいるのではないかと疑念を抱き、衛軍将軍李威と共謀して苻法を殺害してしまいます。苻堅は苻法の死を深く悲しみ、本官を追贈し、献哀公と諡しました。

逸話

苻生暗殺を決行する前夜、苻法は神が現れて「明朝、災いが汝の一門に及ぶ。事前に悟れば免れることができる」と告げる夢を見ました。その直後、苻生の言葉を侍婢から聞いたことで、政変を決意したと伝えられています。

子

東海王 苻陽
清河王 苻敷

苻陽について

苻陽は、父・苻法の死後も前秦に仕え、苻堅の治世末年には大司農にまで至りました。382年、王皮（王猛の子）、周虓らと謀反を企てますが、事前に露見し、苻堅に謀反の理由を問われます。苻陽は「父母の仇とは天地を同じくできない」と答え、父の仇を討つのは当然だと主張しました。苻堅は苻法の死は自身の預かり知らぬところであったと弁明しますが、苻陽を赦免し、涼州の高昌郡に移住させました。その後、西域の鄯善に移りますが、385年に鄯善王に殺害されました。

参考文献

『晋書』巻112, 巻113
『資治通鑑』巻99, 巻100, 巻104
* 『十六国春秋』巻41

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