苻雄

苻雄（ふ ゆう）

苻雄（生年不詳 - 354年）は、五胡十六国時代の前秦の皇族。字は元才。氐族出身で、前秦の基礎を築いた苻洪の末子であり、初代皇帝苻健の弟、そして第3代君主苻堅の父にあたる人物です。

生涯

父の苻洪は後趙に仕え、氐族を率いて勢力を拡大していました。苻雄もまた後趙の将軍として活躍し、龍驤将軍に任じられるなど、その才能を発揮しました。

後趙が冉閔の乱によって混乱すると、苻洪は自立し、姓を苻に改めます。これに伴い、苻雄も苻雄と改名しました。

350年、苻雄は長安から鄴へ向かう後趙の将軍を撃破し、捕らえるという功績を挙げます。

父の死後、兄の苻健が後を継ぎますが、人心が東晋に傾いていることを考慮し、東晋の官爵を称します。この時、苻雄は輔国将軍に任じられました。

その後、京兆の豪族である杜洪が長安を拠点に自立すると、苻健は関中の平定を目指し、苻雄は歩騎5千を率いて潼関に入り、その後、苻健本人が大軍を率いて進軍します。苻雄は杜洪軍を破り、渭北を攻略。各地の勢力を降伏させ、三輔の郡県を苻健の傘下に収めることに成功しました。

長安を制圧後、苻雄は後趙の涼州刺史である石寧を討伐し、その首を挙げます。

351年、苻健が天王・大単于の位に即き、前秦を建国すると、苻雄はその功績により、都督中外諸軍事・丞相・領車騎大将軍・雍州牧に任じられ、東海公に封じられました。苻雄は百官と共に苻健に皇帝即位を勧め、苻健はこれを受け入れ、帝位に即きます。苻雄は東海王に進封されました。

352年、東晋軍が前秦に侵攻すると、苻雄は苻菁と共に迎撃し、大勝を収めます。さらに進撃して東晋軍を破り、謝尚らを淮南へ敗走させました。その後も、関中の民を移住させたり、豫州刺史を配置するなど、領土の安定に尽力しました。 隴西を守る王擢を攻め、前涼へ敗走させました。

353年、前涼が苻雄を討伐するために軍を派遣すると、苻雄はこれを返り討ちにし、多くの首級を挙げました。その後、上洛郡を攻略し、荊州を設置するなど、勢力拡大に貢献しました。

しかし、前秦国内では反乱が相次ぎ、苻雄はこれらの鎮圧に奔走します。354年、東晋の桓温が長安攻略を目指して北伐を開始すると、苻雄は迎撃に向かいますが、桓沖との戦いで敗北。その後、司馬勲を破るなどの戦果を挙げますが、桓温の撤退後、雍を守る喬秉の討伐に向かう途中で病を発し、陣没しました。

苻健は苻雄の死を深く悲しみ、魏王を追贈し、敬武と諡しました。後に苻堅が帝位に即くと、文桓皇帝と追諡されました。

人物

苻雄は若くして兵法に通じ、謀略に長けていました。また、士卒への施しを惜しまず、弓馬の術や政治にも才能を発揮しました。容貌は醜かったものの、その能力は高く評価されていました。

前秦成立後は、国家の元勲として重んじられ、君主である苻健に匹敵する権限を与えられていたと言われています。しかし、苻雄自身は謙虚で博愛に満ち、法律を遵守したため、苻健からの信頼は絶大でした。

逸話

苻健の子である苻生が幼い頃から無法な行いを繰り返していた際、祖父の苻洪が苻生を殺そうとしましたが、苻雄は「子供は成長すると自然に改めるものだ」と諫め、苻健に思い止まらせたという逸話が残っています。

宗室

苻法
苻堅
苻双
苻融
苻忠

参考文献

『晋書』巻112
『資治通鑑』巻98 - 巻99
『十六国春秋』巻41

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