范文

范文（はんぶん）

范文（生年不詳 - 349年）は、チャンパ王国（林邑）の初代国王であり、その生涯は波乱に満ちています。『隋書』では范文（ベトナム語: Phạm Văn）と記されています。

生涯

范文の出自については、『水経注』が引く『江東旧事』に揚州出身と記されています。少年時代に略奪され、奴隷として交州に売られた後、日南郡西巻県の夷帥である范稚の家の奴隷となりました。

奴隷から国王へ

山中で牧牛をしていた際、范文は二匹の鯉を捕らえました。この鯉が鉄に変わったため、その鉄で刀を鍛え、「もしこの刀で石を斬り壊すことができれば、私はこの国の王になるだろう」と願いを込め、石を斬ったところ、干し草のように斬れたと伝えられています。この出来事がきっかけで、范文は野心を抱くようになったとされています。

その後、范稚の命で商人として林邑に入り、北方での見聞を元に、国王の范逸に宮殿や都市の造営、兵器の製法を教えました。これにより范逸の信頼を得て将軍に任じられ、王家の諸子を讒言して国外に追放しました。

336年に范逸が死去すると、後継者がいなかったため、国内の有力者を脅迫して自ら国王に即位しました。即位後、范文は范逸の妻妾を奪い、従わない者を餓死させました。さらに、各地の王子たちを誘い出し、海水と椰子の毒を混ぜたものを飲ませて殺害し、自らの地位を固めました。

周辺諸国との戦い

地位を確立した范文は、大岐界・小岐界・式僕・徐狼・屈都・乾魯・扶単といった周辺諸国に侵攻し、滅ぼして領土を拡大しました。340年10月には、晋に馴象を献上しましたが、その際の書は胡字（ブラーフミー系文字か）で書かれていたとされています。

347年1月には、晋の領土であった日南郡を奪い、太守の夏侯覧以下五、六千人を殺害。さらに九徳郡に進攻しました。范文は、晋の交州刺史朱蕃に対し、日南郡の北の横山を両国の国境とするよう申し入れましたが、拒否されました。同年7月、朱蕃が派遣した督護の劉雄に敗れ、兵を退却させざるを得ませんでした。翌348年4月には、九真郡に進攻し、京観を築きました。

死去

349年、晋が派遣した征西督護の滕畯に盧容で敗北し、九真郡から撤退。同年、死去しました。

范文の生涯は、奴隷から国王へと成り上がり、周辺諸国との戦いを通じて領土を拡大した、波乱に満ちたものでした。

参考文献

George Cœdès (1968-05-01). The Indianized States of South-East Asia. University of Hawaii Press. ISBN 978-0824803681
石井米雄、桜井由躬雄 編『東南アジア史 I 大陸部』山川出版社〈新版 世界各国史 5〉、1999年12月20日。ISBN 978-4634413504
『晋書』巻七 帝紀第七 成帝
『晋書』巻八 帝紀第八 穆帝
『晋書』巻九十七 列伝第六十七 林邑
『南斉書』巻五十八 列伝第三十九 林邑国
『梁書』巻五十四 列伝第四十八 林邑国
『隋書』巻二 列伝第四十七 南蛮
『南史』巻七十八 列伝第六十八 林邑国
『水経注』巻三十六 鬱水

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