菅孝行

菅孝行（かんたかゆき、1939年 7月17日 - ）は、日本の思想家、評論家、劇作家であり、反天皇制運動を牽引した新左翼系の知識人として広く知られています。

生い立ちと学歴

東京府東京市牛込区市谷（現在の東京都新宿区）に生まれた菅孝行は、学習院初等科から高等科まで進学し、坂口芳貞、松井康子、山中祥子、太田省吾、本田義勝、植村泰久、亀井久興らと机を並べました。東京大学入学後は、学業と並行して俳優座養成所にも通い、中村敦夫や加村赳雄らと共に学びましたが、4ヶ月で退所しています。1962年に東京大学文学部を卒業しました。

映像業界での活動

大学卒業後、東映に入社し、京都撮影所で演出助手としてキャリアをスタートさせます。1964年には労働組合支部書記長に就任しますが、争議を経てCM／PR映画制作部門に配転されました。1966年にはアルバイトで『青雲五人男』『判決』『若者たち』の3本のテレビドラマの脚本を執筆しました。撮影所への復帰かドラマの仕事を希望していましたが、福田善之の紹介で虫プロ商事のテレビドラマ『バンパイヤ』に参加するため、1967年に東映を退社し上京しますが、同作品は予算オーバーにより契約解除となり、9ヶ月後には解雇されます。

文筆業と社会運動

1967年に初の単行本『死せる「芸術」=「新劇」に寄す』を出版し、文筆業を開始しました。1970年代はCMやPR映画の演出で生計を立てつつ、予備校講師、公共劇場スタッフ、大学特任教授などを歴任しました。『朝日ジャーナル』や『現代の眼』などの媒体で積極的に執筆活動を行い、「天皇制」批判の著作を多数発表しました。1983年の国営昭和記念公園開園反対運動を機に反「天皇制」運動に関わり、1984年には天野恵一と共に反天皇制運動連絡会を結成しました。

演劇との関わり

菅孝行は新劇を強く批判し、アングラ、小劇場演劇系の演劇人として知られています。1962年に発表した「死せる『芸術』＝『新劇』に寄す」は、1960年代中期のアングラ、小劇場演劇勃興の理論的基盤となりました。1970年代までは劇作も手掛け上演活動も行っていましたが、1990年代以降は鈴木忠志らの演劇人会議に参加しています。

その他の活動

2018年には著書「三島由紀夫と天皇」を刊行し、三島由紀夫の作品に昭和天皇への批判が込められていると論じました。

著書

社会思想評論
「吉本隆明論」（第三文明社、1974年）
「騒乱のフォークロア」(大和書房、1974年)
「天皇論ノート」（田畑書店、1975年、1986年、明石書店から再刊）
「竹内好論」（三一書房、1976年）
「反昭和思想論」（れんが書房新社、1977年）
「鶴見俊輔論」（第三文明社、1980年）
「全学連」（現代書館　For beginnersシリーズ　イラスト版オリジナル12、1982年）
「感性からの自由を求めて」（毎日新聞社、1982年）
「マルクスと現代」(未来社、1982年)
「天皇制」（現代書館　For beginnersシリーズ　イラスト版オリジナル20、1983年）
「賎民文化と天皇制」（明石書店、1984年）
「女の自立・男の自由　性別役割分業の解体を求めて」(毎日新聞社、1984年)
「戦後民主主義の決算書」（農山漁村文化協会、1985年）
「差別」（現代書館　For beginnersシリーズ　イラスト版オリジナル38，1986年）
「高度成長の社会史　暮らしの破壊40年」（農山漁村文化協会、1987年）
「天皇制国家と部落差別　現代日本の統合と排除」(明石書店、1987年)
「9・11以後丸山真男をどう読むか」（河合文化教育研究所、河合ブックレット、2004年）
「菅孝行『天皇制論集』第1巻　天皇制問題と日本精神史」(御茶の水書房、2014年)
「三島由紀夫と天皇」（平凡社新書、2018年）
「天皇制と闘うとはどういうことか」（航思社、2019年4月20日）

演劇評論
「死せる『芸術』＝『新劇』に寄す」(書肆深夜叢書、1967年）
「解体する演劇」（アディン書房、1974年、1981年、れんが書房新社から再刊）
「続　解体する演劇」（れんが書房新社、1981年）
「戦後演劇新劇は乗り越えられたか」（朝日新聞社、1982年、2003年、社会評論社から増補版刊行）
「想像力の社会史」（未來社、1983年）
「戦う演劇人戦後演劇の思想鈴木忠志・浅利慶太・千田是也」（而立書房、2007年）
『演劇で〈世界〉を変える鈴木忠志論』航思社, 2021.9

身体論
「関係としての身体」（れんが書房新社、1981年）
「身体論：関係を内視する」（れんが書房新社、1983年）

戯曲
「ヴァカンス／ブルースをうたえ」（戯曲集、三一書房、1969年）
「はんらん狂騒曲」（『現代日本戯曲体系　8』所収、三一書房、1972年）
「いえろうあんちごうね」（アディン書房、1978年）

大学受験参考書
「早稲田大の小論文」（河合出版、2000年）
「慶應大の小論文」（河合出版、2003年）

共編著
『近代日本の国家権力と天皇制』安丸良夫対談. 御茶の水書房 2014
「佐野碩　人と仕事」編(藤原書店、2014年)
『これからの天皇制令和からその先へ』原武史,磯前順一,島薗進,大澤真幸,片山杜秀共著. 春秋社, 2020.11

シナリオ

テレビドラマ
『青雲五人の男』（日本テレビ、1966年）
『判決』「愛とわかれの時」（NET、1966年）
『若者たち』（フジテレビ、1966年）
『戦国太平記真田幸村』（TBS、1967年、ゴーストライターとして4話分執筆）
『忍者鷹』（1972年）
『ルパン三世 PARTIII』第20話「過去を消した男」（1984年）

映画
『北村透谷わが冬の歌』（1977年公開、「アートシアター129」1977年、「シナリオ代表選1977」所収、1978年）

メディア出演

1987年9月、テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」に出演し、「世代激突! 若者達の愛国心」などのテーマで議論を交わしました。

菅孝行