葛西用水路

葛西用水路

葛西用水路は、埼玉県東部から東京都東部にかけて広がる灌漑用水路です。その歴史は江戸時代初期にまで遡り、農業用水としての役割に加え、都市部では親水空間としての側面も持ち合わせています。

概要

1660年（万治3年）、江戸幕府の天領開発の一環として、関東郡代伊奈忠克によって開削が始まりました。当初は利根川から直接取水していましたが、1968年（昭和43年）に利根大堰が完成したことに伴い、埼玉用水路からの分水へと変更されました。現在、葛西用水路土地改良区が管理を行っています。埼玉・東京の見沼代用水、愛知県の明治用水とならび、日本三大農業用水と称され、疏水百選にも選定されています。

歴史

江戸時代

1590年（天正18年）、徳川家康による利根川東遷事業により、利根川と荒川の流路が変更されました。この河川改修によって生まれた新田開発の必要性から、利根川の旧流路を一部活用して葛西用水が整備されました。伊奈忠克をはじめとする伊奈一族の技術は、洪水時には遊水地に水を滞留させ、肥沃な土を農地に活用するもので、治水と新田開発の両立を可能にし、この技術は「関東流」と呼ばれました。1660年（万治3年）には、幸手領用水が開削され、1719年（享保4年）には、葛西用水元圦が設けられ、利根川の水が羽生領南方用水へと引き込まれ、葛西用水の体系が完成しました。その後も、1728年（享保13年）には、葛飾郡金杉村から深井新田、樋之口村、小向村の開削工事が始まり、庄内古川、葛飾郡加藤村まで延長され、江戸川に排水されるようになりました。1841年（天保12年）には、葛西用水の水量を増やすために、埼玉郡川口村に堰が設けられました。

近代

1940年（昭和15年）に葛西用水路の改修工事が始まり、1952年（昭和27年）には葛西用水路土地改良区が発足しました。1968年（昭和43年）には利根大堰が完成し、取水口が埼玉用水路からの分水へと変更されました。2002年（平成14年）には、足立区内で水質改善のための水生植物の植栽事業が開始されました。

地理

埼玉県内

埼玉県内では約6000haの農地を灌漑しています。利根大堰から埼玉用水路を経て羽生市で分水され、宮田落伏越で中川の源流である宮田落と交差し、加須市北大桑で会の川と合流します。久喜市青毛の玉屋橋までの両岸には遊歩道「コスモスふれあいロード」が整備され、市民によってポピーやコスモスが植えられています。この周辺は、利根川の旧流路であり、河畔砂丘が点在しています。また、青毛堀川合流地点からは大落古利根川と河道を共有しています。越谷市大吉で大落古利根川から逆川として分流し、新方川と元荒川を伏越で潜り、相模町の瓦曽根溜井で八条用水・谷古田用水を分け、垳川を横断して東京都足立区へと続いています。

東京都内

足立区内では葛西親水緑道として整備され、農業用水としての性格を失います。花畑運河を横断し、足立区東部を南へ縦貫します。用水路沿いには遊歩道や休憩用のベンチが設置され、かつては浮き橋が架けられていましたが、現在は撤去されています。東和親水公園には、葛西用水路から引き込んだ池があり、カメが見られます。アモール東和商店街付近には、プールと水車があり、そこから用水路は暗渠へと潜り、古隅田川に流れ込みます。

流域自治体

埼玉県

行田市（埼玉用水として）
羽生市
加須市
久喜市
幸手市
北葛飾郡杉戸町
春日部市
北葛飾郡松伏町
越谷市
吉川市
草加市
三郷市
八潮市

東京都

足立区
葛飾区

分水路・交差水路など

多数の分水路や交差水路が存在します。

橋梁

埼玉県内、東京都内には多数の橋梁が架かっています。

脚注

（省略）

関連項目

大落古利根川
逆川
日本の[[用水路一覧]]
中川低地の河畔砂丘群
鷲宮砂丘
高野砂丘

外部リンク

葛西用水路土地改良区 - 水土里ネット葛西
葛西用水路 - 独立行政法人 水資源機構 利根導水総合事業所
葛西用水路 - ウェイバックマシン（2019年3月30日アーカイブ分） - （有）フカダソフト（きまぐれ旅写真館）
「鷲宮駅コース」　久喜市観光ウォーキングマップ 久喜市ホームページ - 国立国会図書館（インターネット資料収集保存事業）
「久喜・鷲宮コース」　久喜市観光ウォーキングマップ 久喜市ホームページ - 国立国会図書館（インターネット資料収集保存事業）

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