葭原神社

葭原神社：悠久の歴史と自然が息づく聖地

三重県伊勢市中村町に鎮座する葭原神社は、伊勢神宮皇大神宮（内宮）の末社であり、その歴史は古く、延暦時代以前から存在したとされています。内宮の末社十六社のうち、第三位に位置し、式内社として『延喜式神名帳』にもその名が記されています。月読宮の境内、裏参道入口付近に位置し、静謐な空気に包まれた社です。

神々しい社殿と豊かな自然

神明造の板葺き屋根を持つ社殿は南向きに建てられ、一重の玉垣に囲まれています。神明鳥居が一つあり、境内には大きなクスノキが繁茂し、自然豊かな環境を形成しています。賽銭箱は設置されておらず、静寂の中で神々しい雰囲気を醸し出しています。社地の面積は約238平方メートルと、比較的コンパクトな規模です。地域住民からは、祭神の名前に由来する「伊賀井の森」という愛称で親しまれています。

由緒ある社名と祭神

社名の「葭原」は、かつてこの地がヨシ原であったことを示唆しています。その歴史は古く、『皇太神宮儀式帳』にも「未官帳入田社」として記載されています。『延喜式神名帳』には「荻原神社」「萩原神社」と異なる表記が見られますが、後世の考証により「荻原神社」が正しいとされています。

祭神は佐佐津比古命、宇加乃御玉御祖命、伊加利比賣命の三柱です。いずれも田畑の守護神であり、五穀豊穣の神として信仰を集めています。『皇太神宮儀式帳』には、佐佐津比古命が大歳神の子であると記され、『大神宮儀式解』では宇加乃御玉御祖命がウカノミタマと同神であるとされています。『神宮典略』では、伊加利比賣命の「伊加利」が「稲刈り」を意味するか、あるいは田畑と関連する言葉であると解釈されています。

歴史の重みと再興

倭姫命によって創建されたと伝えられる葭原神社は、『皇太神宮儀式帳』への記載から、少なくとも延暦23年（804年）以前から存在していたことが分かります。『日本文徳天皇実録』にも、天安2年（858年）の記述が残されています。中世には社殿が荒廃し、明治初期には社地不明となるなど、歴史の中で幾多の困難を経験しました。

明治時代、神宮は摂末社21社の再興を目指し、1880年（明治13年）には御塩殿神社の古材を用いて、葭原神社の社殿が再建されました。その後、1918年（大正7年）と1957年（昭和32年）に社殿の建て替えが行われ、現在に至っています。

アクセス

葭原神社へのアクセスは良好です。国道23号沿いに位置し、近鉄鳥羽線五十鈴川駅から徒歩約10分、三重交通バス「中村町」バス停から徒歩約3分です。自家用車の場合は、伊勢自動車道伊勢ICから約1分です。月読宮の無料駐車場も利用できます。

参考文献

伊勢文化舎 編『お伊勢さん125社めぐり』
宇治山田市役所 編『宇治山田市史 上巻』
学研パブリッシング『伊勢神宮に行こう』
櫻井勝之進『伊勢神宮の祖型と展開』
式内社研究会 編『式内社調査報告 第六巻 東海道1』

関連情報

神宮125社の一覧
伊勢国の式内社一覧
葭原神社（あしはらじんじゃ） - 財団法人伊勢神宮崇敬会

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