藝術映画社

藝術映画社（げいじゅつえいがしゃ）

藝術映画社は、かつて存在した日本の映画製作会社で、「GES」という略称でも知られていました。1935年に大村英之助と染谷格によって設立され、記録映画を中心に、アニメーションなど多岐にわたる作品を制作しました。この会社は、石本統吉、厚木たか、水木荘也、井上莞といった、後に記録映画史に名を刻む映画作家や、持永只仁をはじめとするアニメーション制作の担い手を数多く輩出したことで、その名を知られています。

創業と初期の活動

1935年、大村英之助と染谷格によって設立された藝術映画社は、その最初の作品として『朝鮮の旅』を制作しました。翌1936年には、南不競が監督・構成を務めた『郵便物語 遞信シリーズ・第一扁』を制作し、逓信博物館の指導のもと、35ミリフィルムで32分の作品を完成させました。

1937年には、後に桜映画社を創業する村山英治が企画部に入社し、会社の制作体制が強化されました。1938年には、芸術映画社の機関紙である『文化映畫研究』を発行し、映画に関する研究や議論を深める場を提供しました。同年には、瀬尾光世が主宰する「瀬尾プロダクション」を吸収し、瀬尾光世と三木四郎が共同で監督した『のらくろ虎退治』や『テク助物語 日の丸旗之助 山賊退治』といったアニメーション作品を制作しました。

記録映画とアニメーションの展開

1939年には、石本統吉が監督し、井上莞らが撮影を担当した記録映画『雪国』が文部大臣賞を受賞し、その制作能力が高く評価されました。また、同年には小河内ダムの建設によって水没する小河内村を描いた『ダムの立つ村』や、アルコール用の甘藷増産をテーマにした『アルコール』など、社会的なテーマを扱った作品も制作しました。同年12月には、持永只仁が漫画映画班に入社し、瀬尾光世のもとで、日本初の多層式アニメ撮影台を開発するなど、アニメーション技術の発展にも貢献しました。

1940年には、木炭増産をテーマにした『製炭報國隊』や、今泉善珠が監督した『機関車C57』など、時勢を反映した作品が制作されました。また、中国の映画会社と提携した『南支経済』や、瀬尾光世が監督・撮影・作画を手がけたアニメーション『あひる陸戰隊』、そして『テク助物語 四十匹の狼』など、幅広いジャンルの作品を制作しました。

1941年には、中国南部の大河を題材にした記録映画『珠江』を制作したほか、井上莞が海軍飛行予科練習生の訓練を記録した航空映画『空の少年兵』が映画雑誌のベストテンで文化映画部門の第1位に選ばれました。また、瀬尾光世が監督・作画、持永只仁が動画を担当したアニメーション『アリチャン』も制作されました。

1942年には、水木荘也が監督し、厚木たかが構成を担当した『或る保姆の記録』や、石本統吉、亀田利喜夫、八名正が共同で演出した記録映画『珠江』、さらに、水木荘也が監督した『勝利への生産』など、多様な作品を手がけました。

解散とその後

1943年3月には、政府から受託したアニメーション『桃太郎の海鷲』を公開した後、芸術映画社は一旦解散し、7社の文化映画会社とともに朝日映画製作に統合されました。朝日映画社は、1945年の敗戦後に再発足したものの、経営は迷走し、1949年2月に債務超過のため業務を停止し、解散しました。

藝術映画社は、短期間ながらも、日本の映画史において重要な役割を果たし、多くの才能を輩出した映画会社として、その名を残しています。

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