藤原諸葛

藤原諸葛（ふじわら の もろくず/もろかず）は、平安時代初期から前期にかけての公卿で、藤原南家巨勢麻呂流に連なる人物です。右大臣・藤原三守の孫にあたり、侍従・藤原有統の長男として生まれました。

経歴

仁明朝では、但馬介や蔵人といった役職を歴任しました。文徳朝に入ると、仁寿3年（853年）に従五位下に叙爵し、斉衡2年（855年）には加賀権介に任ぜられました。

清和朝では、中務少輔、少納言、兵部大輔といった役職を歴任する中で、貞観2年（860年）に従五位上、貞観8年（866年）に正五位下、貞観13年（871年）には従四位下へと昇進しました。その後、貞観17年（875年）に蔵人頭、貞観18年（876年）には従四位上・左近衛権中将に叙任されるなど、清和朝末期から陽成朝にかけて重要な役職を担いました。元慶3年（879年）には参議に任ぜられ、公卿の仲間入りを果たしました。議政官としての職務の傍ら、左近衛権中将や右衛門督といった武官も兼任し、元慶7年（883年）には正四位下に昇叙されました。

元慶8年（884年）には、陽成天皇の退位に伴う皇嗣の評議の場で、時康親王（後の光孝天皇）の擁立を推し進める関白・藤原基経に同調し、剣に手をかけて恫喝することで反対意見を抑え込んだという逸話が残っています。

宇多朝の寛平3年（891年）には、上位者である源直と藤原有実を追い抜き、従三位・中納言に昇進しました。寛平7年（895年）正月に上表して官職を辞任し、同年6月20日に70歳で亡くなりました。最終的な官位は、致仕中納言従三位でした。

人物

藤原諸葛は、琴の名手として知られていました。元慶8年（884年）10月には、紫宸殿で宴が開かれた際、光孝天皇の勅命により、兄弟である藤原諸藤と共に琴歌を演奏したという記録が残っています。このことからも、彼の音楽の才能が宮廷でも高く評価されていたことが伺えます。

官歴

以下に、藤原諸葛の官歴をまとめます。

承和12年（845年）
正月11日：但馬介
正月：蔵人
仁寿3年（853年）
正月7日：従五位下
仁寿4年（854年）
5月22日：次侍従
斉衡2年（855年）
正月15日：加賀権介
貞観2年（860年）
11月16日：従五位上
貞観3年（861年）
2月25日：中務少輔
4月9日：少納言
時期不詳：侍従
貞観8年（866年）
3月23日：正五位下
貞観13年（871年）
正月7日：従四位下
3月11日：兵部大輔
貞観15年（873年）
正月13日：備中権守
貞観17年（875年）
9月：蔵人頭
貞観18年（876年）
正月7日：従四位上
12月26日：左近衛権中将
貞観19年（877年）
正月15日？：止備中守
元慶2年（878年）
正月11日：備中権守、中将如元
元慶3年（879年）
10月23日：参議、左中将備中権守等如元
元慶5年（881年）
12月13日：右衛門督
元慶6年（882年）
正月7日：正四位下
2月3日：兼近江権守
仁和3年（887年）
日付不詳：兼越中権守
2月2日：兼美濃権守
5月13日：兼備前権守
寛平3年（891年）
3月19日：従三位、中納言（超二人）
寛平7年（895年）
正月：上表致仕
6月20日：薨去（致仕中納言従三位）

系譜

父：藤原有統
母：橘数子（橘永継の娘）
妻：百済王勝義の娘
子:
五男：藤原玄上（856-933）
妻：御長湊人の娘
男子：藤原末業
生母不詳の子女
男子：藤原善行
男子：藤原玄致
女子：清和天皇更衣

脚注

注記のないものは『六国史』による。

参考文献

『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年
武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 下巻』戎光祥出版、2009年
市川久編『近衛府補任 第一』続群書類従完成会、1992年

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