藤原高房

藤原高房：平安初期の地方行政官

藤原高房（ふじわら の たかふさ）は、平安時代初期に活躍した貴族であり、藤原北家魚名流の流れを汲みます。参議・藤原藤嗣の三男として生まれ、官位は正五位下・越前守に至りました。彼の生涯は、地方行政官としての卓越した能力と、困難に立ち向かう不屈の精神によって彩られています。

若き日の官歴と地方赴任

高房は、弘仁13年（822年）に右京少進として官界に入り、天長3年（826年）には式部大丞に任ぜられました。天長4年（827年）には従五位下に叙爵され、美濃介として地方に赴任します。この地での彼の統治は、ただ官僚的なものではありませんでした。彼は、何事も人任せにせず、柔軟かつ断固とした態度で事に当たりました。特に、不正や悪事を徹底的に暴き、盗賊が皆無になったという逸話は、彼の行政手腕を物語っています。

仁明朝での活躍

仁明朝に入っても、高房は備後、肥後、越前など各地の国守を歴任し、その治績を高く評価されました。しかし、その功績にも関わらず、昇進は緩やかで、承和8年（841年）に従五位上に叙せられたのは、14年ぶりのことでした。彼は、昇進よりも地方官としての職務を全うすることに重きを置いていたのかもしれません。

突然の死と遺された功績

嘉祥3年（850年）には、文徳天皇の即位に伴い正五位下に昇叙されました。翌年には次侍従に任ぜられましたが、仁寿2年（852年）2月25日、背中にできた悪性の腫瘍が原因で、58歳という若さでこの世を去りました。最終官位は越前守正五位下でした。

人物像：長身と豪胆さ

高房は、身長が6尺（約180cm）という長身で、並外れた膂力の持ち主でした。また、意気盛んで、細かいことにはこだわらない性格だったと伝えられています。その豪快な人柄は、数々の逸話にも表れています。

伝説的な逸話

美濃介として赴任した際、高房は数々の困難に立ち向かいました。安八郡では、貯水用の渠の堤防が決壊しており、農民たちは農業用水の確保に苦慮していました。現地の民は、渠の神の祟りを恐れて堤防の修理を躊躇していましたが、高房は「民の利益になることならば、たとえ祟りで死んでも悔いはない」と宣言し、自ら陣頭指揮を執って堤防を築かせ、用水路を完成させました。

また、席田郡では、妖しい巫女が人々を惑わしていましたが、官人たちはその地を恐れて近寄ろうとしませんでした。高房は単身で乗り込み、巫女の一味を捕らえて厳しく罰し、人心を安定させました。

官歴

弘仁13年（822年）：右京少進
天長3年（826年）：式部大丞
天長4年（827年）：従五位下、美濃介
時期不詳：中宮亮、備後守
承和8年（841年）：従五位上
時期不詳：肥後守
嘉祥2年（849年）：越前守
嘉祥3年（850年）：正五位下
嘉祥4年（851年）：次侍従
仁寿2年（852年）：卒去（越前守正五位下）

系譜

父：藤原藤嗣
母：紀古佐美の娘
妻：藤原真夏の娘
男子：藤原生丘、藤原智泉、藤原山蔭、藤原時長、藤原積善、藤原朝行、藤原尚忠

まとめ

藤原高房は、平安時代初期の地方行政官として、その卓越した能力と不屈の精神で多くの功績を残しました。彼の生涯は、地方官として民を思い、困難に立ち向かった姿を今に伝えています。その豪胆な人柄と、地方での活躍は、後世に語り継がれるべきものです。

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