藤貞幹

藤貞幹（とう ていかん）

藤貞幹（1732年 - 1797年）は、江戸時代中後期の学者・好古家であり、日本の考古学・文献学・目録学の祖とも称される人物です。本姓は藤原氏。字は子冬、通称は叔蔵、号は無仏斎、蒙斎、瑞祥斎、好古など多数あります。

生涯

京都の佛光寺久遠院の院主である玄煕の子として生まれました。父親と同様に僧侶になるべく育てられましたが、仏教の教えに疑問を抱き、18歳で還俗。日野家の本姓である藤原を名乗りました。

和歌、有職故実、書道、儒学、篆刻など、多岐にわたる学問を修めました。また、雅楽、篆書、草書、金石文にも精通し、韓天寿や上田秋成といった文化人とも交流がありました。水戸藩彰考館に招かれ、『大日本史』の編纂にも関与しています。

裏松固禅から大内裏（平安宮）研究の助力を依頼され、『大内裏図考証』の執筆に大きく貢献しました。また、発掘された出土品を吟味し、厳密な考証の必要性を主張しました。

学説と論争

藤貞幹は、記紀の記述を無条件に支持するのではなく、批判的に検討する姿勢を取りました。神武天皇の在位を600年繰り下げ、神代文字の存在を否定した『衝口発』を刊行したことで、国学者たちの反感を買い、本居宣長との間で激しい論争（「日の神論争」）を引き起こしました。この論争では、上田秋成が貞幹を擁護しています。

主な著作

好古日録
集古図
百官
国朝書目
逸号年号
伊勢両大神宮儀式帳考註
古瓦譜

業績と影響

藤貞幹は、文献学、考古学、目録学といった分野において先駆的な業績を残しました。彼の考証学的な研究手法は、後世の学術研究に大きな影響を与え、日本の近世における学問の発展に大きく貢献しました。

特に、古物の研究においては、単なる収集や鑑賞にとどまらず、実証的な分析に基づいた考察を行い、学問としての価値を高めました。彼の『集古図』などは、その代表的な成果と言えるでしょう。

また、正倉院の校倉造が建材の膨張・収縮によって保存性を高くしていると考察するなど、独自の視点からの研究も行っています。

藤貞幹の学問に対する真摯な姿勢と、既存の学説にとらわれない自由な発想は、現代においても学ぶべき点が多くあります。

関連項目

伊平屋島 - 『衝口発』において、この島が神武天皇の出生地であると主張しました。
正倉院 - 校倉造が建材の膨張・収縮によって保存性を高くしていると考察しました。
論語義疏
* 日本の古瓦

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